
変革が“当たり前”になるための最後の壁 ― 組織に根づくかどうかを分ける「定着の関所」―<6つの関所を乗り越える6>
納得が生まれ、スキルを学び、やってみて、振り返り、そして行動が続き始める。ここまで来ると、多くの組織で「変革はかなり進んできた」という手応えが生まれます。
しかし、その一方で、こんな声が聞こえ始めるのもこの段階です。
「でも、いつまでたってもやっている人が増えない」
「結局、やれる人だけがやればいいことなのだろうか」
これは後退の兆しではありません。むしろ、変革が現場に入り込み、“組織のものになるかどうか”が問われ始めたサインです。ここに立ちはだかるのが、6つの関所の最後に位置づけられる「定着の関所」です。
定着の関所で起きる、静かなブレーキ
定着の関所では、目に見える混乱は起きにくいのが特徴です。行動は続いている。成果も一部では出ている。しかし、広がっていかない。
実践しているメンバーが固定化している
周囲は「様子見」のまま距離を保っている
変革行動が「あの人たちの取り組み」になり始める
この状態が続くと、変革は“成功事例”として語られる一方で、組織全体の前提にはなりません。定着の関所とは、続いているのに、当たり前にならないという停滞が生まれる関所なのです。
なぜ「定着」はこれほど難しいのか
定着が進まない理由は、行動量や努力不足ではありません。問題は、その行動が組織としてどう扱われているかにあります。
やってもよいが、やらなくても困らない
評価や期待行動として明示されていない
業務の一部ではなく、追加の取り組みとして扱われている
この状態では、どれだけ続けても「任意の行動」から抜け出せません。定着の関所とは、 「やってもよい行動」から「やるのが前提の行動」へ移行できるかどうかを分ける関所です。
定着に必要な状態①
変革行動が「組織として認められている」こと
定着の第一条件は、その行動が組織として認められていることです。
ここで重要なのは、成果が出ているかどうかではありません。
組織として、どの方向に進もうとしているのか
その中で、この行動はどんな意味を持つのか
これが、メッセージとして繰り返し語られているかどうかです。「誰かが頑張っている」状態から、「組織としてそうしている」状態へ。位置づけが変わらなければ、定着は始まりません。
定着に必要な状態②
半数以上が「やっている、やろうとしている」状態
定着とは、完璧にできる人が増えることではありません。
うまくできなくても試している
質にばらつきはあるが、避けてはいない
「やらない理由」を探さなくなっている
こうした状態が、組織の過半数で起きているかどうかが分かれ目です。一部の優秀な人が続けている状態と、当たり前になり始めている状態は、見た目以上に大きく異なります。
定着を支えるマネジメントの3つの役割
1.変革行動が加速している事実を、組織内に周知する
個々の成功体験を紹介するだけでは不十分です。
行動が広がってきていること
試行錯誤が積み重なっていること
組織として前に進んでいるという事実
これを“流れ”として共有することで、「様子見」は終わりを迎えます。周知は、空気を変えるための重要なマネジメント行為です。
2.これまでの一連の流れを「仕組み」に落とす
納得 → スキル → 実践 → 振り返り → 継続。
この流れを、個人の努力や工夫に任せ続けると、定着は起きません。定例会議、育成の場、日常のマネジメントの中に組み込み、「回る前提」をつくることが必要です。
仕組み化とは、行動を縛ることではなく、続けやすくするための支援です。
3.オペレーションや制度に組み込む(制度化)
評価、育成、業務プロセスなど、既存のオペレーションとの接続は避けて通れません。
変革行動が評価の文脈で扱われているか
育成の中で前提として使われているか
日常業務と切り離されていないか
制度化はゴールではありませんが、定着を支える土台です。ここが曖昧なままでは、「特別な取り組み」に戻ってしまいます。
まとめ|定着とは、変革が語られなくなる状態
定着とは、変革をやり切ることではありません。変革について、あえて語らなくても自然にそうしている状態です。
最後の関所を越えたとき、変革はプロジェクトではなく、組織の前提になります。誰かの努力や熱意に依存せず、日常の判断や行動の中に組み込まれている。
変革が“当たり前”になるかどうか。その分かれ目に立っているのが、「定着の関所」です。






