
振り返りが回り始めた組織で起きる次の壁 ― 変革を続けられるかどうかを分ける「継続の関所」―<6つの関所を乗り越える5>
ニュートラルな振り返りが機能し始めると、現場では少しずつ変化が見え始めます。新しい行動を試す人が現れ、行動と振り返りの往復が回り始める―変革が「理解」や「一度きりの実践」ではなく、日常の中に入り込もうとする段階です。
しかし、この段階で多くの組織が、次の壁にぶつかります。それが「継続の関所」です。
ここは、変革が一部の人の努力で終わるか、組織の当たり前になっていくかを分ける重要な分岐点です。
継続の関所で現場に生まれる本音
振り返りを通じて行動が変わり始めると、次のような声が聞こえてくるようになります。
「自分だけ頑張っている気がする」
「やっていない人もいるのに、意味があるのだろうか」
「続けるほど、自分の負荷が増えていく」
さらに踏み込むと、次のような違和感を持つようになります。
「やってもやらなくても評価は同じ」
「新しい行動をしている自分ばかり大変で、やらない人は今まで通り」
これは、意欲が低いから出てくる声ではありません。むしろ、真剣に変わろうとしているからこそ生まれる感覚です。この違和感を放置すると、行動は徐々に減り、変革は静かに後退していきます。
なぜこの状態は必ず起きるのか
継続の関所で起きている問題は、個人の覚悟や努力の問題ではありません。変革行動が、まだ「個人の取り組み」として扱われていることに原因があります。
新しい行動をする人ほど負荷がかかり、やらない人との差が広がる。にもかかわらず、組織としてその行動をどう位置づけるのかが明確でない、状態です。
結果として、行動している人ほど孤立感を覚えやすくなります。
継続の関所とは、 行動変革を個人の努力から、組織として扱う段階へ移行するための関所 なのです。
継続の関所を越えるために必要な3つの視点
1.繰り返しの行動コントロールと振り返りを止めない
行動は一直線に定着するものではありません。やってみて、うまくいかず、面倒になり、元に戻りそうになる。この揺らぎは自然なものです。
重要なのは、「続かないこと」を失敗として扱わないことです。不快感や抵抗感が出てくることを前提にしながら、行動をどう扱い直すか。そのために、行動コントロールと振り返りを繰り返すことが欠かせません。
継続とは、意志の強さではなく、揺らぎを前提にした設計の問題です。
2.やっている行動が“評価されている”と実感できること
ここで言う評価とは、人事評価や査定だけを指しているわけではありません。
マネジャーが行動を見ている
行動の意図や工夫を言語化している
組織として意味づけをしている
こうした関わりを通じて、「やっていることが扱われている」と感じられるかどうかが重要です。
成果が出ていなくても、行動やプロセスが認められていれば、人は続けることができます。逆に、結果だけが評価対象になると、挑戦は止まっていきます。
評価とは、点数をつけることではなく、行動に意味を与えることです。
3.変革行動を支える「プロセス指導」が機能している
継続の関所を越えるために、マネジメントに最も求められるのがプロセス指導です。
なぜその行動を選んだのか
実際にやってみて何が起きたのか
次は何を試そうとしているのか
結果に対して指導するのではなく、行動と振り返りの回し方そのものを支援する。これにより、行動は個人の試行錯誤から、組織の学習へと変わっていきます。
マネジメントに求められる視点の転換
この段階でマネジメントに求められるのは、「頑張っている人を評価する」ことではありません。
続ける人が報われる構造をつくれているか
行動が組織の文脈で語られているか
継続を支える関わりが日常化しているか
個人の努力に依存せず、続く状態を設計すること。それが、継続の関所を越えるためのマネジメントの役割です。
まとめ:継続の関所は、変革が組織のものになる入口
「自分だけが頑張っている気がする」という声が出てくるのは、変革が本格化し始めた証拠です。ここで必要なのは、誰かに我慢を強いることではありません。
行動が繰り返され、認められ、次につながっていく。そのプロセスをマネジメントが支えることで、変革は一部の人の挑戦から、組織の当たり前へと変わっていきます。
継続の関所は、変革の終わりではなく、始まりです。ここを越えられるかどうかが、組織変革の成否を大きく分けていきます。






