
反省で終わらせない、行動を“続けられる”振り返り方 ― 継続につながるかどうかを分ける分岐点 ―<6つの関所を乗り越える4>
多くの組織で、施策や取り組みは「やってみる」ところまでは進みます。研修を実施し、新しいやり方を試し、現場でも一定のアクションが生まれます。
しかし、その後の「振り返り」の段階で、変革が止まってしまうケースは少なくありません。
振り返りは、行動が継続するか、それとも一過性で終わるかを分ける重要な分岐点です。そして多くの場合、「どんな振り返りをしたか」によって決まります。
なぜ「振り返り」で変革は止まりやすいのか
振り返りというと、真面目な組織ほど「できなかったこと」「足りなかった点」を洗い出そうとします。計画との差分を確認し、原因を分析し、次は失敗しないように対策を考える。一見すると、とても正しい進め方に見えます。
しかし現場では、こうした振り返りが次のような状態を生みがちです。
挑戦した結果よりも、できなかった点ばかりが強調される
「次は失敗しないこと」が暗黙の目標になる
試すこと自体がリスクのように感じられる
結果として、行動量は減り、現場は慎重になります。「もう一度やってみよう」という空気は生まれにくく、変革は静かに止まっていきます。問題は、振り返りをしていることではありません。振り返りの“質”が、継続を妨げてしまっていることにあります。
「できなかった振り返り」が続かない理由
ここで整理しておきたいのは、「反省すること」自体が悪いわけではない、という点です。改善の視点は当然必要です。ただし、振り返りの中心が常に「できなかったこと」になると、次のような副作用が生まれます。
1)現場が失敗回避モードに入る
評価や指摘を意識するほど、人は安全な選択をしがちです。新しいやり方に挑戦するより、無難な方法を選ぶようになります。
2)行動量が減る
試してみること自体がリスクに感じられ、「余計なことはしない方がいい」という空気が広がります。
3)学びが個人止まりになる
できなかった理由を個人の課題として整理するだけでは、組織としての知恵は蓄積されません。
振り返りの目的は、誰かを正すことでも、失敗を減らすことでもありません。本来の目的は、行動を理解し、次につなげることです。そのために必要なのが、ニュートラルな振り返りです。
継続を生む「ニュートラルな振り返り」とは何か
ニュートラルな振り返りとは、「良い・悪い」「正解・不正解」で行動を裁かない振り返りです。評価を一度横に置き、起きた事実と行動の関係を丁寧に見ていきます。
見るべきなのは、結果そのものではありません。
どんな行動を取ったのか
どんな場面で起きたのか
その結果、何が起こったのか
行動を“評価”するのではなく、行動を“理解”する。この視点に立つことで、振り返りは次の一歩を生む時間に変わります。
「できたこと」に注目する理由 ― 再現性を高めるために
ニュートラルな振り返りで特に重要なのが、「できたこと」に意識的に目を向けることです。
うまくいったことは、偶然ではありません。そこには必ず、
その時の条件
工夫したポイント
意識的、あるいは無意識に選んだ行動
があります。
それを言語化することで、「なぜできたのか」が明らかになります。
すると、その行動は再現可能なものになります。次も同じように試せる、他のメンバーにも共有できる、ということです。
振り返りの価値は、成功体験を称賛することではありません。成功を“使える知恵”に変えることにあります。
現場で使える「ニュートラルな振り返り」の進め方
実践では、複雑なフレームは必要ありません。まずは、次のようなシンプルな流れで十分です。
①何をやってみたか(事実)
②何が起きたか(結果)
③うまくいった点は何か
④それはなぜ起きたと思うか
⑤次に活かせそうなことは何か
ポイントは、「できなかったこと」を無理に取り上げないことです。④や⑤を考える中で、改善点は自然に見えてきます。順番を間違えず、まずは行動と成果を落ち着いて整理することが大切です。
マネジメントが押さえるべき関わり方
この振り返りを機能させるために、マネジャーの関わり方がとても重要です。
1)評価や指導モードに入らないこと
正解を教えたり、すぐに代案を出したりすると、振り返りは思考停止の場になってしまいます。まずは整理と理解を支援する姿勢が求められます。
2)「できたこと」を先に扱うこと
順番が変わるだけで、場の空気は大きく変わります。安心感があるからこそ、次の改善にも前向きに向き合えます。
3)振り返りを必ず「次の行動」につなげること
振り返りのゴールは反省ではありません。「次は何を試すか」が具体的に決まることが、継続への橋渡しになります。
振り返りが回り続ける組織の共通点
振り返りが継続的に機能している組織には、共通点があります。
振り返りが定期的に行われている
安心して話せる場として認識されている
行動や工夫を表す言葉が共通化されている
その結果、挑戦が特別なことではなくなり、改善が自然に回り続けます。振り返りは、組織の学習を支えるインフラになっていきます。
まとめ:振り返りは、行動を“続けられる力”をつくる
振り返りは反省会ではありません。行動を積み重ね、学びを次に活かすための学習です。
ニュートラルな振り返りがあるからこそ、行動は続きます。続くからこそ、改善が積み重なり、やがてそれは「新しい当たり前」になっていきます。
振り返りをどう行うか。その設計こそが、変革を一過性で終わらせないための、最初で最大のポイントなのです。






