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変革疲れの現場を動かす“納得感”のつくり方 ― 変わらないといけないのは分かっている、でもできない ―

なぜ今、「納得感」が問われているのか

AI導入、事業構造の見直し、業務効率化、人事制度改革。
ここ数年、多くの組織で「変革」が連続しています。

現場の声を聞くと、こんな言葉をよく耳にします。
「必要なのは分かっています」
「方向性には反対していません」
それでも――行動はなかなか変わらない。

これは抵抗なのでしょうか。
実際には、多くのケースでそうではありません。
現場は“反対”しているのではなく、動くためのエネルギーが枯渇しているのです。

そこで今、重要になっているのが「納得感」です。

変革疲れの正体は「理解」と「行動」のあいだにある

多くの変革は、「理解 → 行動」という短いルートで設計されがちです。

しかし、人が行動を変えるプロセスは本来、
理解 → 納得 → 行動 という段階を踏みます。

変革疲れの現場では、「理解」はしている。
けれど「納得」しきれていない。
この状態で新たな行動を求められ続けると、心は徐々に消耗していきます。

特に問題になるのが、不安のコストです。

  • 失敗したら評価はどうなるのか

  • どこまで求められているのか分からない

  • 今の仕事量で本当にできるのか

こうした不安が言語化されないまま積み重なると、
人は無意識のうちに「動かない」という選択を取るようになります。

納得感があると、人はなぜ動けるのか

納得感とは、単なる合意や理解ではありません。
「自分にとって、どんな意味があるのか」が腹落ちした状態です。

変革の多くは、経営の論理としては正しい。
しかし現場の一人ひとりにとっては、
「それが自分の仕事や成長とどうつながるのか」が見えにくい。

この“意味の断絶”がある限り、
どれだけ正しい施策でも、行動には結びつきません。

納得感が生まれると、人はこう変わります。

  • 指示待ちではなく、自分で考え始める

  • 完璧でなくても、まず試してみようとする

  • 変革を「やらされ仕事」ではなく「自分事」として扱い始める

つまり、納得感は行動を動かす“燃料”なのです。

納得感をつくるための「3つの対話」

では、マネジャーは何をすればよいのでしょうか。
ポイントは、説明ではなく対話です。

① WHYを現場の言葉でつなぎ直す対話:
「なぜこの変革が必要なのか」を、経営の言葉ではなく、現場の日常の課題と結びつけて語ります。
「この取り組みは、あなたのこの仕事を楽にする」
「ここが変わると、判断の迷いが減る」

このように抽象的なスローガンではなく、目の前の仕事との接点を具体的に示すことが、納得の起点になります。

② 不安に名前をつける対話:
人は、不安を正体不明のまま抱えていると動けません。
だからこそ、
「何が一番不安ですか?」
「失敗するとしたら、どんな点が心配ですか?」
と問いかけ、不安を言葉にします。

不安に名前がつくと、それは“扱える課題”になります。
納得感は、不安を消すことではなく、向き合える状態をつくることから生まれます。

③ 小さな行動を一緒に決める対話:
行動できない理由の多くは、「イメージできない」ことです。
そこで重要なのが、最初の一歩を極限まで小さくすること。
「まずはここまででいい」
「今月はこれだけやってみよう」

小さな成功体験が、「自分にもできる」という実感を生み、
次の行動への心理的ハードルを下げていきます。

「行動データ」の時代が、納得感を支える

これからの組織変革では、売上やKPIといった結果データだけでなく、行動のデータが重要になります。

行動データとは、

  • どんな行動が

  • どれくらいの頻度で

  • どのような質で行われているか

を捉えるものです。

例えば、

  • 対話の回数

  • 挑戦した事例の数

  • 振り返りが行われているか

こうした行動の積み重ねが見えると、
「少しずつ前に進んでいる」という実感が生まれます。

この“進んでいる感覚”こそが、納得感を支え、変革を続ける力になります。

変革を前に進めるのは、納得感の積み重ね

変革疲れの現場に必要なのは、強いメッセージでも、追加の施策でもありません。

必要なのは、

  • 意味がつながる対話

  • 不安を扱える課題とし向き合える姿勢

  • 行動が見える設計

そして、それらを通じて育まれる納得感です。

納得感は組織変革成功の第一歩

納得感は、人が動き続けるための戦略的な基盤です。

納得感がなければ、変革は一時的な取り組みで終わります。
納得感があれば、行動は少しずつ積み重なり、やがて「このやり方が当たり前だ」という状態へ近づいていきます。

変革を成功させる第一歩は、人を動かそうとすることではなく、人が動きたくなる理由を、共につくることなのかもしれません。

※シリーズコラム

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