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ヤングシニア世代の沈黙をどう破るか― キャリア研修への誤解と、対話設計の再構築 ―

45歳以上の就労者が組織の中核を占める時代に入っています。
もはやヤングシニア世代の支援は福利厚生施策ではなく、経営戦略の一部です。

しかし現場では、こんな声を耳にします。

「キャリア研修が始まるらしい」
「いよいよ肩たたきか」
「これまでの働き方を否定されるのではないか」

一方で、企業側の本音はまったく逆です。

「経験をもっと活かしてほしい」
「若手育成の中核になってほしい」
「組織文化の担い手になってほしい」

ここには大きな“意味の断絶”があります。

キャリア研修が「否定」に見えてしまう理由

多くの企業がヤングシニア世代向けにキャリア研修を実施しています。
その入り口としてよく用いられるのが「キャリアの棚卸し」です。

ところが、この“棚卸し”という言葉が、誤解を生んでしまうことがあります。

棚卸し=チェック
棚卸し=評価
棚卸し=減点材料探し

こう受け止められた瞬間、研修は「未来を考える場」ではなく「過去を査定される場」になってしまいます。

特に、これまで組織を支えてきたという自負が強い人ほど、その違和感は大きくなります。
役職や報酬の変化を経験している場合はなおさらです。
しかし本来、棚卸しとは“減点”のためのものではありません。

棚卸しとは「価値の再発見」である

キャリアの棚卸しとは、「何をしてきたか」を確認する作業ではなく、「何が価値だったのか」を言語化するプロセスです。

例えば、

  • 修羅場を乗り越えた経験

  • 組織をまとめた葛藤

  • 部下育成で悩んだ日々

  • 失敗から学んだ教訓

これらは履歴書には書けないが、組織にとって極めて重要な“暗黙知”です。
棚卸しは、その暗黙知を掘り起こす行為です。

そして重要なのは、それを「過去の栄光」として整理することではなく、「これからどのように活かすか」を再定義することにあります。

否定ではなく、再定義。
評価ではなく、再活用。

この意味づけが伝わらなければ、どれほど良質な研修も機能しないでしょう。

問題は世代ではなく、対話設計にある

ヤングシニア世代の多くは、実は成長意欲を失っていません。
「若い頃のような働き方は難しいが、まだ貢献したい」
「経験を活かしながら、新しい挑戦もしたい」

その思いがあるにもかかわらず、活躍の場が設計されていない。その結果、静かな停滞が生まれます。

さらに、年下上司との関係性も複雑です。
・評価する側とされる側の逆転
・意思決定権の移行
・役割の変化

これはプライドの問題ではなく、「自己効力感の再設計」が行われていないことが本質です。
ここに必要なのは、ヤングシニア世代側だけの意識改革ではありません。
マネジメントの再設計です。

ヤングシニア世代の支援を成功させる5つの原則

① 棚卸しは「査定」ではなく「資産化」

棚卸しの目的は、過去を点検することではなく、組織の資産を可視化することです。
そのためには、まず企業側が明確にメッセージを出す必要があります。

「あなたのこれまでを否定しない」
「その経験を次の価値へ転換したい」

この前提共有がなければ、対話は始まりません。

② ポジションではなく“役割価値”で再設計する

役職や報酬の変化は避けられないこともあります。しかし、それを“縮小”で終わらせないためにはどうすればいいのでしょうか。
その問いはこうです。
「この組織のミッションに対して、あなたの経験はどう活きるか?」

ポジションではなく、役割の再定義。ここに活躍の再設計の鍵があります。

③ 孤立は個人課題ではない

チーム内でヤングシニア世代の人材が孤立しているなら、それは本人の問題ではなく、設計の問題です。
・経験が活かされる場があるか
・若手との学習循環が生まれているか
・意見が歓迎される文化があるか

組織全体で問い直す必要があります。

④ 年下上司のマネジメント力を高める

年齢逆転マネジメントは、偶然うまくいくものではありません。
・承認の仕方
・役割委譲の設計
・1on1での対話技術

ここを育てなければ、世代間の溝は埋まりません。

⑤ ミッションとの接続で意味を再構築する

キャリアは個人の問題でありながら、同時に組織の問題でもあります。
「あなたは何者か」ではなく、「この組織は何を目指し、その中であなたはどう貢献できるか」この問いに向き合ったとき、棚卸しは初めて未来志向のプロセスになります。

ヤングシニアは“調整対象”ではない

経験豊富な人材が沈黙している組織に、持続的成長はありません。
問題は年齢ではなく、能力でもなく、対話が設計されていないことです。

ヤングシニア世代の活躍は、個人の意識改革ではなく、組織とマネジメントの再設計から始まります。

いま必要なのは、「どう管理するか」ではなく、「どう意味を再構築するか」という視点ではないでしょうか。

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