「叱る・注意する」が怖くなる前に ─ ハラスメントを防ぐ“信頼ベース”の関係づくり

「叱る」や「注意する」ことが怖くなっていませんか？
ハラスメント防止の意識が高まる中で、指導やフィードバックに臆病になっているマネジャーも少なくありません。
しかし、指摘を避けることはチームの成長を止めることにもつながります。
大切なのは、“叱るかどうか”ではなく、“どんな関係の上で伝えるか”。
信頼をベースにした関わりが、ハラスメントを防ぎ、伝わる対話を生み出します。

最近、「部下を叱るのが怖い」「注意しただけでハラスメントと言われるかもしれない」と感じるマネジャーが増えています。
確かに、社会全体でハラスメント防止意識が高まる中、「どこまで言っていいのか」が分からなくなるのは自然なことです。

しかし、“叱る”こと自体が悪いわけではありません。
問題は、その言葉がどんな関係の中で、どんな意図で伝えられているかにあります。
信頼関係があれば同じ言葉も前向きなメッセージとして届きますが、関係が薄いと攻撃や否定として受け取られやすいのです。

“叱る・注意する”が機能するかどうかを分けるのは、信頼ベースの有無です。
信頼を土台にするには、次の３つの視点が欠かせません。

一つ目は、日頃の関わりの積み重ね。
普段から部下の努力や変化に気づき、「ありがとう」「助かったよ」と声をかけているかどうかで、注意の受け止め方は大きく変わります。
「普段から見てくれている」と感じている部下は、指摘を“期待”として受け止めやすくなります。

二つ目は、目的の共有です。
「あなたのために言っている」ではなく、「チームとしてより良くしたい」という共通目的を示すことで、指摘が“支援”に変わります。

そして三つ目は、伝え方のトーンです。
声の大きさや表情、タイミングなど、感情的な圧を与えずに伝える工夫が必要です。
「叱る」のではなく、「伝える」「話し合う」という姿勢を持つことで、同じ内容でも対話になります。

多くのマネジャーが、過去に指摘がこじれた経験から“叱る怖さ”を感じています。
けれど、その不安を放置すると、問題行動を見逃したり、注意が遅れて関係がさらに悪化したりすることにもつながります。

大切なのは、「言える関係をつくる」ことを日常のマネジメントに組み込むことです。
日々の雑談や1on1で「どう感じている？」「やってみてどうだった？」と問いかける。
その繰り返しが、叱る・注意する場面を“関係を壊す時間”から“成長を支える時間”へと変えていきます。

“叱る・注意する”は、信頼の上に成り立つコミュニケーションです。
ハラスメントを恐れて何も言わないのではなく、信頼を積み重ねて“言える関係”をつくる。
その意識の転換こそが、ハラスメントを防ぎながらチームの成長を支えるマネジメントです。