あなたのキャリアをデザインしよう! 第4回 キャリア・コンセプトを明確にする

前回までは自律型人材になるための三要素である「WILL/WANT(やりたいこと)」「CAN(できること)」「MUST(すべきこと)」のうち「WILL/WANT(やりたいこと)」と「CAN(できること)」をみてきました。今回は、いよいよ自分が「すべきこと」は何かを見据え、さらにそこから「自分は、仕事や人生を通じてどのような価値を提供したいのか」を言葉で整理した「キャリア・コンセプト」を明確にしていきます。

●キャリア・コンセプトを明確にするとは

今回は、いよいよ自分が「すべきこと」は何かを見据え、さらにそこから「自分は、仕事や人生を通じてどのような価値を提供したいのか」を言葉で整理した「キャリア・コンセプト」を明確にしていきたいと思います。

「キャリア・コンセプト」を明確にすることは、キャリアをデザインする際、大変重要です。「キャリア・コンセプト」とは、キャリア・カウンセリング的な言い方をすると「自己概念」、つまり、「自分は何者なのか、自分は何がしたいのか」を明らかにしていくプロセスとも重なります。

この「自己概念」が曖昧なまま人生を生きることは、その人にとって知らず知らずのうちにストレスになります。キャリア・カウンセリングをしていると、年齢にかかわらず、「私は自分が仕事や人生を通じて、何をしたいのかよく分からないのです」という方に多く出会います。そして、ほとんどの場合、その方の表情はとても不安そうです。

「私は仕事や人生を通じて○○ということをやっていきたいんです!」そう明言できるキャリア・コンセプトを一緒につくっていきましょう。

 

●誰に対して貢献したいかなぜ、その貢献がしたいか

「キャリア・コンセプト」は、「誰に対して、何を通じて、どのような価値を提供したいか」で整理すると見いだしやすくなります。

感覚的にパッと、自分のキャリア・コンセプトができてしまえば、それでよいのですが、なかなかはっきりしないという方は次のように考えると整理できます。

まずは「何を通じて」は、第3回「自分の強みを知る」で見つけた自分の強みを中心に考えましょう。

次に「どのような価値を提供したいか」は、第2回「自分のモチベーションの源泉を知る」で明らかにした「モチベーションの源泉」を中心に考えましょう。

そして「誰に対して」は、「自分が誰に貢献したいか」「なぜ、その貢献がしたいのか」を中心に考えましょう。

企業にお勤めの皆様は、会社が宣言している企業理念やビジョンを背景において、自分が「誰に対して」貢献したいのかを考えるとよいでしょう。

例えば、医療関係の方であれば、「病気で苦しんでいる人の中でも、特に子どもたちに貢献したい」、住宅メーカーの方であれば、「住宅を求める人の中でも、特に家族の絆を大切にしたいと考える人に貢献したい」などです。

BtoBの業界にお勤めで「人」だとイメージしづらい場合は、「地域社会全体」や「地球環境に対して」などとしてもよいでしょう。「自分が誰(何)に貢献したいか」「なぜ、その貢献がしたいのか」は、その人がこれまでの生き方を通じて、培ってきた「使命感」が表れるところです。キャリア・カウンセリングをして気付くのは、少なからぬ人が幼少のころのつらい体験が、あるときにプラスに転換されて、使命感に近い想いが醸成されるようです。

例えば、幼少のころにいじめにあってつらい思いをした人が「個性を発揮できずに苦しんでいる人が、個性を発揮できるようにお手伝いしたい」(人財育成関係者)、両親が共働きで寂しい思いをした人が、「家族の絆を感じられるような食事を楽しめる場を提供したい」(外食業界関係者)、病弱で入院を繰り返してきた人が「病気で苦しむ人を助けたい」(医療機器メーカー関係者)などです。そして、自分の身近な人がつらい思いをしている場合も「そういった人を助けたい」と思うこともあります。

「マイナス体験からの貢献に対する想いでよいのでしょうか? それは結局、自分を癒すための自己中心ではないですか?」と質問されることもありますが、私はそれでよいと思います。

カウンセリングのプロセスの中で「つらい体験があったから、今そういう人の役に立てるのですね。そう考えるとつらい体験をしたことにも意味があったのですね」とおっしゃる方がいます。どのような体験にも意味があり、それらを「人の役に立つ」という方向に変えていく力が人には備わっているのだと感じます。

 

●自分自身に問いを投げ掛けると潜在していた想いが浮かびあがる

さて、皆さんは誰(何)に対して貢献したいですか? なぜ、その貢献がしたいですか? どのようにその貢献がしたいですか? もう一度、これらの3つの問いを自分に投げ掛けてみましょう。

そのとき、頭の中でもやもや考えるだけでなく、紙に書いたり、実際に声に出して問いに答えたりすることが重要です。言葉にすることで、潜在意識にあった想いが明らかになる(顕在化する)からです。

会社の仲間や家族に協力をお願いして質問してもらい、それに答えてもよいでしょう。あるいは、自分で一人二役(質問する人と答える人)をして、問いに答えても効果はあります。

「キャリア・コンセプトの明確化」は、比較的短い時間でできる人もいれば、半年以上もやもやし続ける人もいます。「自己概念の中核」つまり、自分はいったい何者なのかを定めていくプロセスですから、焦らず、じっくりと内面を探求してください。「キャリア・コンセプト」が明確になったとき、「私はこれを軸に人生を生きていく!」と晴れ晴れした気持ちで、未来に向かって歩み始められるはずです。

 

●やってみよう・キャリア・コンセプトを明確にするための「問い」

1.あなたは誰(どのような人)に対して貢献したいですか?(※対象は人に限らず、地域社会や自然環境、動植物などでも可)

2.なぜ、その貢献がしたいのですか?

3.どのようにその貢献がしたいですか?

4.「私は仕事や人生を通じて○○ということをやっていきたい」という表現で、自分のキャリア・コンセプトを整理すると、どのような表現になりますか?

※(弊社季刊誌『行動人』447号より加筆修正)

 

第1回 今なぜ、キャリア・デザインなのか?
第2回 自分のモチベーションの源泉を知る
第3回 自分の強みを知る

第5回 キャリア・ビジョンを描く
第6回 ビジョン実現に向けて、現実と向き合い、行動する
※詳細を聞きたいなどございましたら、上記お問い合わせよりご連絡ください。

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