
戦略は伝わっているのに、なぜ現場は動かない? ~経営の言葉を、現場の「自分ごと」に変える「意味の翻訳」とは~
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「経営戦略は、社員にきちんと伝えている」
そう考えている企業は多いのではないでしょうか。
経営会議で方針を決め、社内説明会を開く。
社長メッセージを発信し、資料を配布する。
管理職にも繰り返し説明する。
それでも、しばらくすると現場から、
「結局、何を変えればいいの?」
「今までの仕事と何が違うの?」
「会社が言っていることは分かるけれど、自分には関係がない」
そんな反応が返ってくる。
戦略は、確かに「伝わっている」。それなのに、現場の行動は変わらない。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
もしかすると、足りないのは「伝えること」ではなく、戦略を現場の仕事の意味にまで翻訳することなのかもしれません。
「戦略を知っている」と「戦略の意味が分かっている」は違う
例えば、会社が「顧客起点の組織へ変わる」という戦略を掲げたとします。
社員が、「当社は顧客起点を重視している」と答えられたとしても、それだけで戦略が浸透したとは言えません。
大切なのは、「顧客起点になると、自分の仕事はどう変わるのか?」まで理解できているかどうかです。
営業であれば、顧客への提案方法が変わるかもしれません。
商品開発であれば、企画の起点や判断基準が変わるかもしれません。
管理職であれば、メンバーへの問いかけや会議の進め方が変わるかもしれません。
つまり、会社として「何を目指すか」から、個人として「何を変えるか」までつながって、初めて戦略は現場の行動につながります。
戦略を「伝える」だけでは、この間にある距離を埋めることはできません。
戦略が現場で動かない「意味の断絶」
私たちジェックでは、戦略実装の過程で起きる接続不全を「5つの断絶」として整理しています。
その一つ目が、「意味の断絶」です。
「意味の断絶」とは、経営・事業戦略が、社員にとって「自分の仕事では何を意味するのか」まで翻訳されていない状態 です。
「経営が示す戦略」と「現場で日々行われている仕事」。
この二つの間に距離があると、社員は戦略を「理解」していても、自分の仕事を変えるところまでは至りません。
その結果、戦略は伝わっているのに、行動が変わらない という状態が生まれます。
なぜ「伝える」だけでは、行動につながらないのか?
理由の一つは、経営と現場では、見ている景色が違うからです。
経営から見れば、
「AIを活用して生産性を高める」
「顧客起点の組織に変わる」
「新たな価値創出に挑戦する」
ことは、経営戦略として意味のあるテーマです。
しかし、現場の社員からすると、
「具体的に何をするの?」
「今の仕事にどう関係するの?」
「何をやめて、何を始めるの?」
「今までの評価はどうなるの?」
という疑問が生まれます。
この疑問に答えないまま戦略だけを繰り返し伝えても、社員にとっては「会社から降りてきた新しい方針」の一つになってしまいます。
だからこそ必要なのが、戦略の「意味の翻訳」です。
「経営の言葉」を「現場の言葉」に翻訳する
戦略の意味を翻訳するとは、単に分かりやすい言葉に言い換えることではありません。
重要なのは、「この戦略によって、自分たちの仕事は何を変える必要があるのか」まで具体化することです。
例えば、
経営の言葉:「顧客起点の組織へ変革する」
↓
部門の言葉:「顧客の声を、企画や営業活動の意思決定にこれまで以上に反映する」
↓
管理職の言葉:「会議で社内事情だけを議論するのではなく、顧客にとっての価値から問い直す」
↓
個人の言葉:「依頼された仕事をこなすだけでなく、その仕事が顧客のどんな課題につながるのかを確認する」
ここまでつながって初めて、「なるほど。自分はこれを変えればいいのか」という理解になります。
つまり、管理職には単なる「伝達者」ではなく、戦略を現場の仕事に翻訳する役割が求められます。
管理職は「伝達者」から「翻訳者」へ
戦略を現場に浸透させるうえで、管理職の役割は非常に重要です。
経営から伝えられた戦略を、そのままメンバーに伝える。それだけでは、現場に届いたときに意味が薄れてしまうことがあります。
必要なのは、
「この戦略は、私たちの部門にとって何を意味するのか」
「今までの仕事の何を変える必要があるのか」
「私たちのチームでは、どんな行動が必要なのか」
を考え、メンバーと対話することです。
その意味で、これからの管理職には、「戦略の伝達者」から「戦略の翻訳者」へ という役割転換が求められるのではないでしょうか。
AI時代だからこそ、「意味の翻訳」が重要になる
ここで、AIの存在も無視できません。
生成AIによって、情報を整理したり、資料を作ったり、戦略を文章化したりすることは、これまで以上に容易になっています。
だからこそ、これからは「情報を伝える」ことそのものの価値が相対的に下がっていく可能性があります。
AIに、「この経営戦略を社員向けに分かりやすく説明して」と依頼すれば、分かりやすい文章を作ることもできるでしょう。
しかし、「この戦略は、私たちのチームにとって何を意味するのか?」を考え、メンバーと対話しながら意味をつくっていくことは、単なる情報変換とは異なります。
さらにAIを活用すれば、
・戦略を部門別・役割別に整理する
・想定される現場の疑問を洗い出す
・対話や説明のロールプレイを行う
・さまざまな立場から戦略を捉え直す
といった形で、「意味を翻訳する」プロセスを支援することもできます。
AIは、人に代わって意味を決めるものではありません。
人が意味を考え、対話し、現場に落とし込むプロセスを支援する。
そのように使うことで、AIは組織変革の推進力になっていきます。
「戦略浸透」のゴールは、理解ではなく行動
ここまでの話を整理すると、
「戦略を伝える」⇒「戦略を理解する」⇒「自分の仕事との関係を理解する」⇒「自分が変える行動を決める」⇒「実際に行動する」 という段階があります。
企業が目指すべきなのは、最初の「伝える」で終わることではありません。
戦略が、一人ひとりの行動に変わるところまでつなげること。それが、戦略実装です。
そして、その最初の接続をつくるのが「意味の翻訳」なのです。
「意味の断絶」を埋めるために、まず問い直したいこと
自社の戦略が現場に浸透しているかを考えるとき、次の問いがヒントになります。
・社員は、自社の戦略を自分の言葉で説明できるか
・自分の仕事と戦略がどうつながっているか説明できるか
・「だから、自分は何を変えるのか」まで言えるか
・管理職は、経営の言葉を部門・チームの言葉に翻訳できているか
・戦略について、社員同士が対話する機会があるか
もし、これらに「少し難しい」と感じるものがあれば、戦略と現場の間に「意味の断絶」があるのかもしれません。
そして、ここを埋めることが、組織変革の最初の一歩になります。
戦略を「伝える」から、「現場の行動」につなげるへ
AI時代の組織変革で重要なのは、AIを導入することだけではありません。
AIを含む新しい技術や戦略を、組織の中で実際の変化につなげていくことです。
そのためには、戦略を伝える だけではなく、戦略の意味を翻訳し、役割を変え、行動を変え、実践につなげる という一連のつながりが必要です。
「戦略は伝わっているのに、なぜ現場は動かないのか?」そう感じたときは、まず「理解させる」ことではなく、「その戦略は、あなたの仕事にとって何を意味しますか?」という問いから始めてみてはいかがでしょうか。
あなたの会社では、戦略実装のどこで「断絶」が起きていますか?
「戦略を伝えているのに、現場の行動が変わらない」
「新しい方針が、なかなか自分ごとにならない」
「管理職が、経営と現場の間でうまく翻訳できていない」
もしこのような課題を感じているなら、戦略実装の最初の段階で「意味の断絶」が起きているのかもしれません。
ジェックの「AX組織変革実践ガイド」では、戦略実装を阻む「5つの断絶」を整理し、自社のどこで接続が切れているのかを確認できるセルフ診断をご紹介しています。
自社の戦略は、現場の行動までつながっているか。まずは「5つの断絶」から、自社の現在地を確認してみませんか。
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次回予告:新しい戦略なのに、なぜ仕事は増えるのか?
戦略を実行するために新しい役割や仕事を増やした結果、現場が疲弊してしまう。
次回は、戦略と仕事・役割の間に起こる「役割の断絶」について考えます。







