
マネジャーが苦しいのは能力不足ではない~仕事を増やすのではなく役割を変える~
「育成も大事だとは思うんです。でも正直、そこまで手が回らないんです」
最近、管理職研修や組織変革プロジェクトの現場で、マネジャーからこのような声を聞く機会が増えています。
プレイヤーとして成果を求められながら、部下育成もしなければならない。
1on1を実施するよう求められ、メンバーのエンゲージメント向上も期待される。さらに近年では、AI活用や業務効率化、働き方改革への対応も求められています。
マネジャーに期待される役割は年々増えているように見えます。
一方で、多くのマネジャーは決して手を抜いているわけではありません。
むしろ以前よりも真面目に取り組み、学び、努力している方が増えているように感じます。
それにもかかわらず、「思うようにチームが動かない」「部下育成に手応えがない」という悩みは減っていません。
なぜなのでしょうか。
仕事が増えたのではなく、役割が変わった
その理由の一つは、マネジャーに求められる役割そのものが変化していることにあります。
かつての組織では、「指示を出す」「進捗を管理する」「品質をチェックする」ことがマネジメントの中心でした。
しかし現在はどうでしょう。働く人の価値観は多様化し、若手社員は「なぜこの仕事をするのか」という意味を重視するようになりました。
人材不足が進み、一人ひとりの成長や定着が組織成果に直結する時代になっています。
つまり、これからのマネジャーには、
「管理する人」ではなく、「人とチームの成長を支援する人」としての役割が求められているのです。
ところが、多くの企業ではマネジャーに求める業務だけが増え、仕事の進め方や組織の仕組みは以前のままになっています。
その結果として、マネジャーは常に時間不足に陥り、育成やチームづくりが後回しになってしまうのです。
1on1がうまくいかない本当の理由
こうした状況を改善しようと、多くの企業が1on1を導入しています。
しかし、
「毎月実施しているのに変化が見えない」
「話すことがなくなってしまう」
「部下が本音を話してくれない」
という声も少なくありません。
その原因は、1on1のスキル不足だけではありません。
実際には、1on1は手法ではなく関係性の上に成り立つものだからです。
どれだけ質問技法を学んでも、日常の関わりの中で信頼関係が築かれていなければ、本音の対話は生まれません。
また、普段は業務指示しかしていないのに、月に一度だけ「何か困っていることはある?」と聞かれても、部下は戸惑ってしまいます。
1on1を機能させるためには、面談スキルだけではなく、日々の関わり方そのものを見直していく必要があります。
AI時代だからこそ、人にしかできない仕事がある
最近では、AI活用に関する相談も急増しています。文書作成や情報整理、分析業務など、多くの業務が効率化され始めています。
これは組織にとって大きなチャンスです。
しかし、AIを導入すればするほど、人間にしかできない仕事の価値も高まります。
メンバーの強みを見つけること
挑戦を後押しすること
チームの方向性を示すこと
対話を通じて成長を支援すること
こうした役割は、AIには代替できません。
だからこそ、AIによって生まれた時間をさらに業務で埋めるのではなく、人と向き合う時間へ転換できるかどうかが重要になります。
これからのマネジャーに求められるのは、業務管理の高度化だけではなく、「人を活かす力」の向上なのかもしれません。
マネジャー個人の努力だけでは限界がある
ただし、この変化をマネジャー個人の努力だけに委ねることには限界があります。
・育成を重視すると言いながら評価指標は短期成果のみ
・1on1を推奨しながら会議は増え続ける
・チームづくりを求めながらプレイヤー業務は減らない
これではマネジャーは疲弊してしまいます。
本当に必要なのは、マネジャー個人を変えることだけではなく、マネジャーが人と向き合える環境を組織として整えることです。
人事制度、会議運営、評価のあり方、組織文化。こうした仕組み全体が連動して初めて、マネジャーは育成やチームづくりに力を注ぐことができます。







