マネジャーの共通課題「仕事の偏り」を解決する
マネジャーにとって、メンバーの仕事量バランスを適切に保つことは大きな課題の一つです。仕事量の偏りは、チーム全体の効率を低下させるだけでなく、個々のモチベーションにも悪影響を及ぼします。今回は、メンバーの仕事量のバランスについて偏りを解決するためのヒントを考えます。
部下の仕事量バランスの重要性とは
仕事量のバランスが崩れると、過労やストレスが原因で部下のパフォーマンスが低下することがあります。このため、マネジャーは部下それぞれの作業量を把握し、適切に調整することが求められます。さらに、チーム全体の士気が下がらないようにするためには、各メンバーが自身の役割を理解し、適切な負荷で働ける環境を作ることが重要です。
仕事量の偏りが発生する主な原因
・タスクの見える化不足:各メンバーが悩んでいる仕事の全体像が把握できていない。
・業務配分の基準が不明確:仕事の割り振りが個人のスキルや経験に依存している。
・適切なフォロー不足:一部のメンバーが進捗を遅らせている中で、他の人が負担を補っている。
・チームの文化:特定のメンバーにタスクが集中しても断れない雰囲気がある。
解決のヒント
➤タスクの見える化
タスク管理ツールの活用があります。プロジェクト管理ツールなどをうまく活用することで、誰が何を担当し、どれくらいの負荷がかかっているか把握できます。
➤業務配分の基準
スキル、経験、業務量に基づいて公平な配分を行う基準を定めることが有効です。例えば、経験があるからだけでは、いつも同じ人に業務を依頼することになります。部下の負荷の状況と、このレベルであれば任せられるといった基準を明確にしておくことが公平な配分につながります。
➤適切なフォロー
スキルシェアの促進をしましょう。特定の人にしかできない仕事がある場合は、他のメンバーもできるように教育やスキルトレーニングを行い、分散可能な体制を作ることで、チームとして相互のフォローができる体制が取れるようになります。
➤チームの文化の改善
特定の人に仕事が偏っていてもそれがチームの当たり前となっている場合、メンバーは次のような考えになっている可能性があります。
仕事が集中するメンバーは、「自分ばかり忙しいのはおかしいけれど、 他の人がやってもどうせ自分が手伝うことになるなら自分でやった方がいい」「できる人がいないからやるしかない」。
それ以外のメンバー、「あの人は特別だから」「難しいことを任されても大変だから他の人にやってもらったほうがいい」「面倒なことはやりたくない。貧乏くじをひきたくない」「できる人がやればいい」「どうせマネジャーはいつもあの人に頼むだろう」。
このような状態は、前述のタスクの見える化や業務配分の基準やスキルシェアなどでのチーム全体のレベルアップが図れていないために起こっている可能性があります。
それ以上に、このチームの文化の改善にはマネジメントのスタンス(考え方)の改善が必須です。
次項では、チームの文化に影響を与えるマネジャーのスタンス(考え方)を掘り下げてみましょう。
マネジャーのスタンス(考え方)
仕事量の偏りが発生する主な原因となるマネジャーの行動の奥にある考え方は次のようなものがあります。
➤タスク管理ツールなどに対して
「そもそもタスク管理ツールなどで明確にしなくてもメンバーのことはわかる。ツール操作の手間がかかって逆に非効率だ」
➡このような、客観的なデータよりも自分の経験や勘などの主観に頼る考え方では、自分の経験などから理解できる範囲でしか状況を把握できず、目の前の依頼しやすいメンバーに業務を任せるという状態からなかなか抜け出せません。ツールを導入したとしても活用しきれない場合もあります。次のようなスタンス(考え方)を持ってみましょう。
「今は激変の時代だから、メンバーの業務も細分化専門化することもある。状況の把握は、客観的な判断ができるデータや情報の活用が有効だ」
➡主観的から客観的になることで、見えていなかった課題(業務の偏り)が把握できるようになります。そこから改善につながります。
➤業務配分の基準について
「できる人にやらせよう。できそうにない人には、できることしか任せないのが安全だ」
➡目の前の効率だけしか見えておらず、個人に頼ったままではいずれチームが立ち行かなくなります。次のようなスタンス(考え方)を持ってみましょう。
「今、できそうになかっても知識や経験を積めばできるようになる。できるようになるかどうかは、マネジャーのマネジメント次第だ」
➡未来のチームのあるべき姿を目指して、多少時間がかかったり失敗したりしてもメンバーに経験を積ませることの大切さを意識することが重要です。
➤適切なフォローについて
「フォローはできる範囲でやればいい。全員が同じことをやるわけではないので、部分的な連携ができていれいい」
➡専門性の高い業務であれば、専任化する方が効率的です。ただし、同じ目標に向かって連携するチームであれば、最低限チームメンバーがどのような業務を行っているかの共有は必要です。そして、連携するためには他のメンバーの業務を知ることも必要です。そのための実践方法がスキルシェアです。スキルシェアまではできなくても、コミュニケーションを図り、担当メンバーが多忙や不在の時にサポートできるようになっていなくてはチームとしての活動が停止してしまいます。
次のようなスタンス(考え方)を持ってみましょう。
「チーム内で相互フォローできる体制をつくろう。自分だけの業務ではなくチームとしての動きを広く知り学ぶことは、メンバーそれぞれのスキルアップにつながる。またサポート体制がまわれば、チームとしての効率化やレベルアップにつながる」
➡サポートによって、メンバーの知見が広がったり視座が高まったりします。未来のチームのあるべき姿を目指して、多少時間がかかったり失敗したりしても、チーム全体のレベルアップを図るためには必要です。
➤チームの文化の改善
チームの文化とは、チームの中で当たり前になっている暗黙知と言えます。
例えば、メンバーそれそれが自分が担当している業務の共有や報告をしなくても違和感がない(他のメンバーが何をやっているか知らないがずっとそうだから気にしない)、メンバーが他部門と連携している業務があることを他部門の人から聞いたことにも違和感がない(自分の仕事じゃないから関係ない)、などです。
※このような状況が当たり前になっていると、チームの文化としては、個人商店のように個人の力だけで業務を回している状態と言えます。
当たり前となっている文化を変えることは難しいです。しかし、変えることはできます。
まず、マネジャー自身がスタンス(考え方)を見直し、実際の行動を変え、変わること自体を率先垂範することが必要です。そして同時に、目指すチームの姿を明確にし、メンバーに理解できるように伝え、そのためのマネジメントを実践していくことです。
マネジャー自身、自分が持っている考え方に気づき、それを変えることによって、行動を変えられます。チームの文化同様に、自分の当たり前となっている考えを変えることは簡単ではないかもしれませんが、変えることはできます。
今必要とされる人材育成を実践するためには、自らの考え方を知り、修正していくことが最善です。