ベテラン/シニア人材をローパフォーマーにしない

ベテラン/シニア人材がローパフォーマー化すると組織としては大きな損失となります。ベテラン/シニア人材は、経験や知識を持っています。また、高いポジションについている人や組織への影響力が大きいこともあります。もしベテラン/シニア人材がローパフォーマー化し、それを放置してしまうと、組織全体のモチベーションやパフォーマンスを下げてしまうことになりかねません。

ローパフォーマーとは、期待している目標に対して、成果が低い従業員のことを指します。どのような組織にもローパフォーマーは存在します。今後さらに労働力不足が進む中、このローパフォーマーをどう活かすかが、企業の成長にも大きく関わってきます。

ベテラン/シニア人材がローパフォーマー化すると組織としては大きな損失となります。ベテラン/シニア人材は、経験や知識を持っています。また、高いポジションについている人や組織への影響力が大きいこともあります。もしベテラン/シニア人材がローパフォーマー化し、それを放置してしまうと、組織全体のモチベーションやパフォーマンスを下げてしまうことになりかねません。

 

●ベテラン/シニア人材がローパフォーマーに陥る原因

ベテラン/シニア人材は、これまで得た知識や成功体験が豊富であるがゆえに、環境の変化に対して、「自分も変わらなければならない」という意識が低い傾向があります。「自分は大丈夫」など自分事として捉えられないと変化についていけず、新たな環境で求められるスキルを得られないまま、がんばっても成果につながらなくなります。そうなると、モチベーションも下がってしまうでしょう。
また、ベテラン/シニア社員自身も「やりたいことがなくなった」「会社からの期待を感じられなくなった」といった意識の変化もでてきます。ベテラン/シニア社員を活性化するためには、本人と組織の両方の対策が必要です。

 

●ベテラン/シニア社員の状態とマネジメントのポイント

ベテラン/シニア社員の状態 原  因 対 応 策
自社をとりまく社会環境、法令等の理解不足 人事や上司のアドバイスが無い場合、このままでよいと思い込んでしまう。 変更に対しては、全社発信だけでなく、個別に説明する。外部環境の変化については、ベテランだから言わなくてもわかるだろうという認識を持たず、細やかに対応する必要がある。
自社内の変化(経営戦略、ビジネスフローの変化)に対応できない 自分事化できていない、当事者意識がないため、DXや戦略の変化に対応するためのスキルセットなどができていない。 変化の当事者であることを意識させるための対話や勉強会を設ける。変化がどのような影響を与え、このままだと本人がどうなってしまうのかを伝え、考えさせる。
自分のやりたい仕事、その評価がえられない 今までと同じやり方では、環境が変わり評価を得られなくなっている。そのため、自分がやりたいことを見失っている。 マネジャーは対話において、本人の希望と現状を共有する。そして、本人のやりたい仕事や評価が得られない原因を究明し、そのために何をすべきか本人に描かせる。
人間関係や家庭の事情、年齢を重ねることでの衰えを感じ意欲がさがる 悩みや不安があっても一人で抱え込んでしまい、相談しないため、仕事のパフォーマンスにも影響がでている。 マネジャーは丁寧な面談で、本人の相談に乗り、素直な希望や価値観について傾聴する。その上で、本人の希望がかなえられるよう、必要があれば組織全体にも働きかける。
自分の仕事の進め方を変えず、新たなスキルアップをしない 今までの成功体験にこだわり、プライドがある。また新しいことを学ぶのに抵抗感がある。 本人に「組織からの期待」「発揮してほしい能力」を伝える。本人が、これを学び理解することでさらに貢献できると認識できれば、本人の学習意欲を向上させることができる。
自分の立場を守るために、役割や評価を都合よく解釈する 自分の現状の立ち位置を客観的に正しく理解できない。自分は正しく、他が間違っているという思考に固まりがちである。 マネジャーが本人に具体的にしっかりと伝える必要がある。「ベテランなんだからわかるだろう」や「年上部下には言いづらい」といったマネジメントで放置するとチーム内にも悪影響が出る。

 

●陥りやすいマネジメント

やるべきことが分かっているにもかかわらず、ベテラン/シニア社員に対する陥りやすいマネジメントの傾向があります。

「仲良し」マネジメント

シニア社員に反旗を翻されたくないがゆえに、良好な関係を維持することに力を注ぐ。シニア社員の好ましくない行動に対しても目をつぶることが多い。

「放任」マネジメント

シニア社員にマネジメントしても、「どうせ変わらないのだから無駄」と考え、必要最低限のマネジメント以外は行わない。

「見下し」マネジメント

管理職経験のないシニア社員を「仕事ができない人」と決めつけ、見下すような態度を取る。期待していないので、重要な仕事を回さない。

「迎合」マネジメント

シニア社員に対して、「〇〇部長」などとかつての役職で呼ぶ。シニア社員の承認を取ってから物事を進める傾向がある。

このような傾向は、マネジャーの考え方=ベテラン/シニア社員に対する価値観に左右されています。

・ベテラン/シニア社員は、自分のマネジメントを脅かす存在である
 (適当に機嫌を取っておこう。機嫌を損ねられると面倒だ)

・ベテラン/シニアのノウハウなど、今の時代には通用しない
(育成に時間をかける必要はない)

・管理職でないベテラン/シニアは、人を育成する力などないはずだ
 (チーム内での役割など期待しない)

・チームにベテラン/シニア社員がいるのは、弊害以外のなにものでもない
 (ベテラン/シニア社員に手をかけている余裕はない)

考え方(価値観/固定観念)が変わらないままでは、たとえマネジメント研修を受けても、何かうまくいかないことがあれば、「やはりベテラン/シニア社員を活性化させるために手をかけるのは時間の無駄ではないか」と思い、マネジャーの行動が変わることが難しくなります。

 

●マネジャーの価値観を変える

マネジャーの持つべき考え方は以下の通りです。

・ベテラン/シニア社員は、自分のマネジメントを助けてくれる存在である

・ベテラン/シニア社員のノウハウは、チームにシナジーをもたらす

・これまでの経験を活かして、人を育ててくれるはずだ

・チームにベテラン/シニア社員がいるのは、チーム力を高めるチャンスだ

ベテラン/シニア社員はチームや組織に良い影響を与える人材として信頼し、さらなる活躍を期待するとともに必要なマネジメントを行うことが重要です。

 

●マネジメントだけではない組織としての考え方

ベテラン/シニア社員を活性化させるためには、マネジャーの動きがポイントになるのですが、それだけではなく、組織全体として取り組む必要があります。

それにより、他の社員も「ベテランになったときもやりがいをもって活き活きと働くことができる組織だ」「何歳からでも新しいことに挑戦できる」「自分に合ったミッションで活躍できる」などと組織に対するエンゲージメントも向上するはずです。

また、自組織がどのような傾向にあるか、ベテラン/シニアを含む人的資本を活かすことができているかをサーベイなどで客観視してみることも一つの方法です。

年齢を重ねることによる心身の衰えや、個人の環境の変化など、ベテラン/シニア社員が自身の今後を考えたときに、「もう無理だ」と意欲も成果も下げてしまうことなく、ベテラン/シニアならではの強みを活かせる組織にすることが、これからさらに加速する少子高齢化社会で生き残るためには必要です。

※詳細を聞きたいなどございましたら、上記お問い合わせよりご連絡ください。