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「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 一.Y理論の人間観に立つ

元来、人は何のために働くのか、永遠に正解のない問いかけですが、働く以上は、「お金のため」「生活のため」だけでなく、やりがいや喜びやそれ以上のものを得たいものです。

2018年12月に閣議決定された、「労働施策基本方針」にも、三つの社会の実現を目指しているとあります。(厚生労働省「労働施策基本方針(概要)」 2019.4.26閲覧 ※PDFファイル)

1.誰もが生きがいを 持って、その能力を有効に発揮することができる社会 

2.多様な働き方を可能 とし、自分の未来を自ら創ることができる社会 

3.意欲ある人々に多様 なチャンスを生み出し、企業の生産性・ 収益力の向上が図られる社会

「働き方改革」は、ともすると、「仕事の効率化を図り(生産性を高め)、私生活を充実させるためのもの」、というような思考に陥っていないでしょうか。「仕事と私生活の両方の幸せを獲得」してこそ、人生全体が充実するのではないでしょうか。

本シリーズは、「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介いたします。

目次[非表示]

  1. 1.経営トップが望む「仕事ぶり」
  2. 2.ジェックの学び
  3. 3.仕事を謳歌する組織をつくる六カ条
  4. 4.仕事を謳歌する組織をつくる六カ条 一.Y理論の人間観に立つ
    1. 4.1.Y理論の人間観で、自分や他人の美点を凝視し強みを活かす
    2. 4.2.「自己実現の環境を自ら創ること」を支援する
    3. 4.3.試行錯誤の自由裁量を統合する


経営トップが望む「仕事ぶり」

我々経営者が社員に望むことの一つとして、生産性の高い個人と組織(チーム)の「仕事ぶり」があります。「仕事ぶり」と言っているのは、仕事に対するものの見方や考え方、各種スキル(価値創造力、対応力、技術力、セルフコントロール力等)も含めた、仕事への取り組み全体を言っています。

生産性の高い良い「仕事ぶり」とは、お客様や市場、そして自社組織に新たな価値が生まれ、生産性向上を自分たちの責任で試行し、成果につなげることです。そのような「仕事ぶり」をしている人やチームは、自社組織の中に、少なからずいるのではないでしょうか。他人からの動機付けがある・無いに関わらず、仕事そのものを愉しみ、結果を喜び、価値創造に挑戦し、試行錯誤を苦にせず、仲間やお客様からの信頼が厚い人やチームです。そのような人やチームは、自社の「理念・ビジョン」を胎に落とし、自ら目的や目標を掲げ、その成果にこだわり、諦めずに何度でも挑戦しているのではないでしょうか。少なからず、我々経営者には、そのような経験があったはずで、もちろん、今の立場でも経験していることと思います。

このような良い「仕事ぶり」をしている人やチームは、個人としてもチームとしても「仕事を謳歌する仕事ぶり」になっていると言えます。

我々経営者は、自分がそうであるように、社員個人としても、チームとしても、「仕事を謳歌する仕事ぶり」をしてもらいたいし、できるのだと心の底では望んでいるものなのです。

しかし、残念ながら、なかなか経営トップの意思が伝わらない場合もあります。「目の前の業務をこなすだけで、精一杯である」「自分には、新たな価値を創るなどという能力はない」「自分の能力を発揮できるメンバーはごく一部で、それ以外のメンバーは能力がない」「自分たちを活かせないのは組織の能力がないから」などという「仕事ぶり」に陥っていたとすれば、経営トップの望む、「生産性を上げる」「価値を創造する」「仕事を愉しむ」などは、社員一人ひとりの心に刺さらないばかりか、「余分に働かせようとしている」と受け取られることも考えられます。



ジェックの学び

「仕事を謳歌する社員集団をつくりたい」と思うようになった背景には、当社での経験が大きく影響をしています。

当社では、1964年(昭和39年)東京オリンピックの年に創業し、カリスマ的な創業者のもと、バブル崩壊前までは右肩上がりの成長を続けてきました。時代に合った商品(研修)を、数多くのお客様に売れば良かったからです。さらに、部門間競争を取り入れ、「あのチームより1円でも多く、1件でも多く」というのが、モチベーションとなり、ますます業績が向上していきました。これは、この時代では、どの企業でも、同じような状況だったのではないかと思います。

ところが、バブルがはじけたあと、創業者の引退も重なり、当社は変革を迫られました。時代に合った商品の開発、カリスマ的で強いリーダーシップを発揮していた経営スタイルからの脱却等々、一人ひとりが考え、新しい価値を創造していくことが求められたのです。

ところが、新しいトップのもと、戦略が出され、社員もまじめに取り組むものの、すぐには成果が出ず、トップが交代し戦略が変わる、また新たな戦略のもとで取り組みを始めても、すぐには成果が出ずトップが交代、ということが数度繰り返されました。

トップが変わるたび、それまでの取り組みを否定され続けた社員は、いつしか「どうせトップが代わると、また否定され、一からやり直さなければならない。ならば、否定されない程度に取り組めばよい」と心にブレーキがかかってしまっていたのではないかと思います。そして、仕事を謳歌することよりも、社内を見て動く社員が増えたように感じました。当然、生産性は落ち、新たな価値も生まれにくくなっていました。

この心のブレーキを外し、安心して新戦略に取り組むにはどうすればよいのか、仕事を謳歌し生産性を高める個人と組織をどう創るのか、そのためには、どういうものの見方や考え方をして、どういう点に留意して、マネジメントに反映させていけば、「仕事を謳歌する組織(チーム)」を育てていくことができるのかを考え、六カ条として整理しました。



仕事を謳歌する組織をつくる六カ条



一.Y理論の人間観に立つ

二.仕事に意味を見出す

三.お役立ち道を極める

四.強みを磨く

五.達成のプロセスを味わう

六.仲間と分かち合う


今回は、第一条をご紹介します。



仕事を謳歌する組織をつくる六カ条 一.Y理論の人間観に立つ

「Y理論の人間観」とは、アメリカの経営学者であるD.マグレガーがその著書『企業の人間的側面』で提唱した、“普通の人間は、環境や条件さえ整えれば、生来、遊びや休憩と同じように仕事が好きで、自らすすんで責任をとろうとし、高い問題解決力を発揮する”という考え方です。一方で、「X理論の人間観」は、“人は生来、働くことが嫌いで、命令されたり脅されたりしないと力を出さず、責任を回避したがるもの”という考え方のことです。(参考:D.マグレガー『企業の人間的側面(新版)』1978, 高橋達男訳, 産業能率短期大学出版部, 新訳24版, pp.38-55)

この「Y理論の人間観」、つまり「人は、環境・条件さえ整えれば仕事が好き」を前提で経営をすることにより、社員が仕事を謳歌することが可能になるのです。なぜなら、社員は、環境・条件が整っていれば、自発的に仕事に取り組むことができます。つまり、わくわく感を持って仕事に取組み、そのプロセスをも愉しむことができるのです。

X理論では、もともと仕事が嫌いと決めつけているのですから、仕事を謳歌するということはありえません。仕事を謳歌できるというのはY理論の実践であり、証明とも言えるのです。

Y理論の人間観で社員を見なければ、社員集団に内在している不安や心のブレーキ(仕事が謳歌できない要因)に気づくことができず、修正することも支援することもできないでしょう。ましてや、「X理論」の人間観で接すれば、社員の人格否定につながりかねず、ますますその仕事ぶりが悪化していくことになるのです。


Y理論の人間観で、自分や他人の美点を凝視し強みを活かす

「仕事が好きであること」を実感するには、いろいろありますが、その一つとして、「自分らしさが発揮できている」「自分の強みで役立っている」「他の人から、自分らしさや強みが認められている」ということではないでしょうか。だからこそ、自分の強みを活かして価値創造に向かうことができるのです。

そのためには、お互いの美点・強みを見つめ合い、その美点を活かしあうことが必要です。そして、美点を更に磨いて、成果につなげる「その人ならではの強み」にすれば、更に仕事が面白くなる確率が高くなります。

互いや自分の「弱み・できていない点」ばかりに着目するような風土があれば、経営トップ自らが人の見方を点検する必要があります。


「自己実現の環境を自ら創ること」を支援する

人は、達成の喜びを味わったり、成長を実感したりすること、あるいは、なりたい自分像に近づくこと、つまり自己実現をすることで、「仕事が好き」と感じることができます。自己実現は、会社や上司が与えたプランをこなしてできるものではなく、自分の自己実現の場は自分で創り管理(セルフマネジメント)をすることが望ましい姿です。それを支援するのも経営トップやリーダーの仕事です。

そのために、業務に集中したり創造的な業務をしたりする時間を自らが管理する、自ら周りを巻き込み仕事の目的を達成するなど、自らのマネジメントやプロデュースをするよう、経営トップやリーダーは指南し、見守ることを心掛けるのです。このように、自己実現の場や環境を、主体的に自分が組織を活用して創ることになり、やりがいにつながるのです。


試行錯誤の自由裁量を統合する

Y理論では、「仕事が好き」というほかに「自ら責任をとったり、高い問題解決力を発揮したり」するということも、特徴的なことで、生産性の高い人とチームを創るためには必要なことです。「与えられた仕事を、言われた通りにこなす」だけでは、責任感も生まれませんし、仕事の問題解決を自らしようと思えないものです。だからこそ、「自ら相違工夫をし、失敗も含めて試行錯誤する余地」を与えることが必要です。

ただし、何でもかんでも試行錯誤を奨励しろと言っているわけではありません。試行錯誤をする自由裁量の範囲を上司と統合することで、メンバーは安心して、自分のコントロール範囲に責任を持つことになり、やる気につながります。経営トップやリーダーは、「許されること、許されないこと」の「柵」を明確にすることが必要です。これを「主人公の柵」と呼んでいます。「主人公の柵」は、安心感のよりどころとなり、やる気につながるのです。


これらをマネジメントの基本として、経営トップはもちろん、役員、幹部、リーダーが共通の価値観として認識することが、「仕事を謳歌できる組織」づくりの第一の条件となります。

葛西 浩平
葛西 浩平
株式会社ジェック 代表取締役会長

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