
ミッション起点の組織変革が、ウェルビーイングと業績を両立させる理由
組織の存在意義を再定義し、それを軸に変革を進める企業が増えています。ミッション主導の組織変革が、従業員のウェルビーイングをどう高め、組織全体の成長につながるのかを考えます。
ミッションは「存在意義」の再発見
ミッション主導の組織変革とは、企業の存在意義や社会的な使命を明確にし、それを軸として制度や文化を再構築する取り組みです。短期的な成果にとどまらず、従業員の価値観や感情に根差した、持続可能な成長を目指すものと言えるでしょう。
近年、業績重視の改革だけでは限界が見え始め、企業のミッションを見直す動きが活発になっています。たとえば、あるIT企業では「人々の生活をより豊かにする」というミッションを改めて掲げ、現場主導でプロジェクト選定を行うように変更しました。従業員の声が反映されることで、役割意識とエンゲージメントが高まりました。
ウェルビーイング=“人がいきいきと働く” 条件
ウェルビーイングは、身体的・精神的な健康のみならず、社会的なつながりや経済的安定も含めた「人生の充足度」を意味します。職場におけるウェルビーイングが高い状態とは、従業員が自己の価値を実感し、成長実感と安心感をもって働けている状態です。
たとえば、ある従業員にとっては柔軟な働き方がストレス軽減につながる一方で、別の従業員にとっては心理的に安全なチームの存在が大きな支えになることもあります。このように、ウェルビーイングには多様な要素があり、組織はそれに応じた支援が求められます。
ミッションがウェルビーイングを高める理由
組織のミッションが明確になり、それが日常業務に浸透すると、従業員の内面にもさまざまなポジティブな影響が生まれます。
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目的意識の向上
自分の仕事が組織の目的とどう結びついているのかが見えることで、日々の業務に意味を感じられるようになります。
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メンタルヘルスの安定
共通の価値観に基づいた対話が増え、心理的安全性が高まります。その結果、ストレス軽減や孤立の防止につながります。
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対話と協働の促進
ミッションが共有されることで、組織内の部門やチームを超えた連携が促され、コミュニケーションの質が向上します。
ミッション主導の変革の施策例
ミッションを起点に組織変革を推進し、ウェルビーイングと業績の両立するための施策例を紹介します。
「持続可能な未来をつくる」というミッションを掲げているが、日々の業務に追われる中でその理念が形骸化しているという課題
〈施策〉
・経営層は、ミッションを再定義し、全社に浸透させることを変革の出発点とする。
・半年間にわたって全社員参加型の対話ワークショップを実施。
・各部署が自部門の役割とミッションとの関係を再確認。
・併せて人事評価にも「ミッションとの整合性に基づく行動指針」を導入。
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〈期待される効果〉
・社員の定着率向上
・ミッションに共感する中途採用者増加
・業績への定量的な効果
部門間の連携不足や若手の早期離職が課題
〈施策〉
・「人と人との交流を通じて成長する」という新たなミッションを策定し、社内交流を促進する文化改革に着手
・部署横断のプロジェクト活動の実施
・“対話の場”を月次で実施
・新入社員と中堅社員が直接関われる場の設定
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〈期待される効果〉
・従業員サーベイ「自分の成長を感じられる」「人間関係が良好」項目でスコア向上
・部門横断による情報連携で新価値創造が加速
・新入社員の入社半年後満足度向上
ミッションを軸にした変革を成功させるための3つの鍵
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経営層が“体現者”となること
ミッションは掲げるだけではなく、行動で示す必要があります。特に経営層が日常的にミッションに基づく意思決定を行うことが、全社の納得感を生みます。
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従業員の“共感”と“参加”を引き出す
ミッション策定や制度設計の段階から現場の声を取り入れることで、形式的なスローガンではなく「自分ごと」として捉えられるようになります。
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変化のプロセスを“見える化”する
ミッションと実際の行動がどうつながっているか、変革がどのように進んでいるかを定期的に見直し、組織全体で共有する仕組みが必要です。
まとめ
ミッションを中心とした組織変革が、従業員のウェルビーイングを高め、その結果として組織パフォーマンス向上につながることをご紹介しました。
企業の変革は、制度や戦略の刷新だけではなく、「なぜこの組織で働くのか」という問いへの答えを全員が持てることから始まります。ミッションの再確認は、組織と個人をつなぎ直す力を持っています。
まずは、小さな問いかけからでもかまいません。自社のミッションは、従業員の心に届いているでしょうか? そこに立ち返ることが、ウェルビーイングと持続的な成長を両立させる第一歩となるはずです。