エアコンや空気清浄器など「空気環境」の専門メーカーとして知られるダイキン工業株式会社。そのエンジニア集団であるサービス本部西日本サービス部が、営業担当者を育成するために編み出したのが、営業プロセスチェックシートとそれによる面談、ロールプレイングを通じた「問題解決OJT」、そして、サービスステーション所長の営業マネジメント能力の向上でした。こうした取り組みによって、営業担当者や、彼らを指導する所長はどのような変化を遂げたのか。社内の雰囲気や業績に変化は現れたのか…。取り組みを推進している西日本サービス部長の東野様をはじめとする皆様に、お話をうかがいました。後編です。
※当インタビューは、2020年3月中旬に、写真撮影時以外は参加者全員マスク着用のうえ、実施いたしました。
------ 営業プロセスを数値で見える化したチェックシートと、それを基にした所長との面談によって、どのような変化がうまれたのか教えてください。
東野 どこでつまずいているのか自分でもわかるので、営業担当者に自分の弱点や長所に対する自覚が生まれたというのが一つの変化です。しかし1番大きな変化は、所長が変わっても「同じ物差しで判断できるようになった」という部分かもしれません。例えば宇佐美は今課長ですが、その前は所長でした。私も5~6年前は所長でした。このようにサービスステーション(以下、SS)の所長は随時変わって行きますが、営業担当者を同じ物差しで測っているので、成長をきちんと評価することができますし、同じ視点で指導できます。
以前であれば、業績が上がっていなければ「何をやってるんや、どうなってるんや、もっといかんと…」(笑)と、ある意味、詰め寄っていくような感じでしたが、定量化することによって「この営業担当者は引き合いがないけど、訪問件数は足りているのか」など、営業プロセスのつまずきがひと目でわかるようになりました。指導方法も「どう思う?」「こういうのが足りないのでは?」と対話で方向性を決めていくようになり、西日本サービス部全体が大きく変わったと思っています。上から言うのではなく本人に考えさせる。人間は自分で発言したことに対して責任を持とうとするので、頑張り方も違ってきましたね。
------ どのように所員が変わったのか、具体的な例はありますか?
久保 営業担当者が新しく入社する時、当社はサービスエンジニアと連携しながら動かなければならないので、そういう部分を不安に感じる人もいます。不安だけど、新人がいきなり所長のところに行って相談するのもためらわれる。そういう緊張している状態の中で「10日ごとに面談の場を設けてもらうだけでも心強い」「自分の成長のために所長が時間を割いて寄り添ってくれることがありがたい」という言葉を、新人の営業の人から直接聞いたことがあります。その人がどんどん実績を上げていくのを見て、チェックシートや面談というこの育成システムは効果があると実感しました。
小林 私が感じているのは、所長がしっかり会話をして営業担当者の意見を引き出して導いていく。そのことをすごく大事にするようになったことです。以前は一方的な指導やアドバイスが非常に多かったのが、今ではメンバーの自主性を大切にした、いわゆるコーチング対話に変わった事が面談を聞いていてもよくわかります。
東野 定量化は、上位を説得する時にも役立っています。例えば事業目標が10億だったとします。そのSSの営業担当者が5人なら、2億ずつやるしかない。2億をどうやって達成するか…? 勘と経験と度胸 (笑)、度胸というか気合だ!(笑)…、とこれまではやってきました。しかし定量的に見ると、この事業目標を達成しようと思ったらこの人員では無理だということがわかります。人を入れて欲しいということを上位に話すことができますし、定量化の数値がその根拠になるわけです。
------ 営業担当者が成長したことは、業績にも反映されている?
金山 7~8年前は事業に苦戦していたところから、右肩上がりになってきているので、所長としても納得感を持って取り組むことができています。
東野 育成システムを始める前と比べると、営業の人員が1.5倍ほどの増加に対して、事業としては2倍になっています。もちろん商材の効果もあって事業拡大できている部分もありますが、一人当たりの能力を上げることができ、成果が出たことは間違いないと思います。
------ マネジメントの到達度を7段階に分けて、所長の皆様をテストしているという話をお聞きしました(前編)。所長という立場になってなおテストというのは、皆様どのようなお気持ちなのでしょうか。
東野 嫌だと思いますよ。私だったら、絶対受けたくないですね (笑)。
小林 嫌々ではないと思います(笑)。普段もしっかりマネジメント業務に取り組んでいますし、テストの準備もちゃんとやって来られます。挑戦しに来ているなと感じます。
宇佐美 普段しっかり継続的にやっていれば、5段階までは普通に行けます。6段階・7段階になってくると多少ハードルは上がりますが、とんでもなく難しいとは思わないですね。
小林 実際、テストに落ちる所長もいますが、そこはマネジメント力向上の要として今は、ジェックの柳原講師の厳しい目で判断して頂いています。今後はどんどん増えてきている、「7段階に合格した所長」の協力を得ながら、テストの内製化を進めていく予定です。
------ テストをクリアすることで、所長にはメリットがあるのですか。給与の査定とか。
東野 現段階では、マネジメントスキルが7段階になったからといって、給料やボーナスがよくなることはありません。しかしスキルが上がると、当然そのSSの業績も上がります。業績が上がることによって、所長としての評価も上がっていきます。
------ 営業マネジメントに対する責任を自覚して、熱心に取り組んでいる所長も多いのでしょうか?
久保 上の段階を目指している人は多いと思います。そういう人には、宇佐美課長や、他のSSの所長が応援に行って指導することもあります。
------ 上の段階をクリアした人が、組織の枠を超えて指導するというのは他の会社ではあまり聞かないことですね。
東野 当社は各拠点に所長がいますが、その拠点を3つないし4つ束ねているのが宇佐美のような課長職です。ですからその課長職のエリア内で横のつながりが強く、互いに教え合っているのです。
秋山 所長たちが前向きに取り組んでいるのは、営業担当者を育てるというだけでなく「部下全体のマネジメント術を教わっている」と受け止めている意識があるからだと思います。皆元々はエンジニアなので、マネジメントをあまり学ばずに所長になった経緯があります。ところがマネジメントをしっかりやると、売上にも結び付くことがわかってきたんですね。所長たちの、所員や協力業者さんに対するコミュニケーション力も向上していると私は感じています。
------ チェックシート作成やマネジメント7段階試験の仕組みなど、普通はコンサルタントが用意するものだと思います。ところがダイキンさんは、自分たちで作り上げている。これは社風でしょうか?
東野 ダイキン工業の社風だと思います。他のシステムも結構自分たちで作り、仕事にマッチしたものにしています。いい部分でもありますが、システムがバラバラにいっぱいあって、使う側の人間はいくつも覚えないといけない (笑)。もちろん、だいぶ統合しましたが。
秋山 自前の技術にこだわる会社ですからね。
------ 今後の育成システムの目標を教えてください。
小林 少し難しいことかもしれませんが、この営業プロセス面談の効果が業績につながっていることを「見える化」していきたいと思っています。例えば、半期でいくら以上の売上を達成した人は、営業プロセス面談の効果が十分あった営業担当者として、面談から卒業できるみたいな形も考えています。そうすることで面談のモチベーションが上がる事も期待したいです。
東野 目標をクリアすれば一人前の営業担当者として面談から卒業。また目標を下回るようだったら再度復活させる。そういうふうにしてもいいかと思っています。
私としては、さらなる発展形というか将来像としては、営業担当者自身が営業プロセスチェックシートで自己統制できる所までもっていけたらいいなと思っています。所長が営業担当者を定期的に面談するのではなく、普段はチェックシートを使って営業自身が自分をコントロールする。何か困ったことがあったら、自分から所長の所にいき「ちょっと相談に乗ってください、今ここで苦労していて…」とチェックシートを見せながら助言をもらう。もしそれができれば、新人の営業担当者が1~2年でベテランに近い実績を出せるようになるかもしれないと期待しています。
------ 相当、個人の力を上げていく必要がありますね。
東野 それほど難しいことではないと思っています。弊社会長の井上が、「社員一人一人の成長の総和が企業発展の基盤」だと言っています。継続していくことで一人一人が変わっていく。いずれ、西日本サービス部の「当たり前の基準」が上がる。さらに継続して成長する。そういうものだと思います。
<取材を終えて>
東野部長の、穏やかなお人柄のなかにある、地道に継続して実現しようという確固たる信念と、これまでのお取組みを自分事として受け止め、様々な工夫を凝らしながら、ここまで歩み続けてこられた皆様の奮闘ぶりがうかがえました。常に、お客様と接するSSの営業担当者や所長が動きやすいようにと考え、着々と進化をし続けているのも、現場を経験し今のお立場になられた皆様だからこそと思われます。
インタビュー中も、終始明るい雰囲気で、忌憚なくものが言い合える関係性が見え、抜群のチームワークが感じられました。
ありがとうございました。
■ ダイキン工業 サービス本部の省エネ事業
「空気」と「環境」の新しい価値で 世界に答えを出していきます
ダイキンがめざすのは「環境負荷を減らしながら、人や空間が健康で快適な社会」です。ダイキンの主商品である「空調機」は20世紀初頭に発明され、世界中の暮らしや労働に変革をもたらしましたが、一方でその普及は電力の消費拡大にもつながり、環境、とくに気候変動へ影響があることもわかっています。だからこそダイキンは、空気と環境の新しい価値で、地球規模の課題に挑み続けます。
そのような中、私達サービスがご提案している省エネ事業は、地球環境に貢献しつつお客様と私達が利益を享受し合う事ができるとてもやりがいある仕事です。若手所員も多く活躍しています。
■ お客様と繋がる
私達が今、力を注いでいるのがIoTです。25年以上積み重ねたIoT技術で24時間空調機の遠隔監視を始め、お客様の法令対応や働き方改革をサポートするソリューション商材を拡充しています。
<ダイキン工業株式会社>
ダイキン工業株式会社「社是」 西日本サービス部応接室に掲示
●本社 大阪市北区中崎西2-4-12 梅田センタービル
●創業 1924年10月25日
●設立 1934年2月11日
●資本金 85,032,436,655円
●従業員数 単独 7,499名、連結 80,369名
●グループ会社数 連結子会社 313社(国内29社、海外284社)
●事業内容 空調・冷凍機、化学、油機、特機、電子システム
(2020年3月31日現在)
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