ダイキン工業株式会社(前編)

エンジニア出身の上司が、営業を育てる。
解決策は営業プロセスの「見える化」だった。



ダイキン工業株式会社 サービス本部 西日本サービス部
 西日本サービス部長 東野哲弥 様
 ソリューション営業担当部長 秋山崇 様
 フィールドサービス担当課長 宇佐美秀之 様
 企画グループ 企画担当課長 金山秀勝 様
 企画グループ 久保依子 様
 企画グループ 小林真理子 様

写真向かって左から、宇佐美様、金山様、東野様、小林様、久保様


エアコンや空気清浄器など「空気環境」の専門メーカーとして知られるダイキン工業株式会社。そのエンジニア集団として、機器の保守点検や修理を担当しているサービス本部は、2009年の組織の改編に伴い、他部門から営業職を大勢迎えました。上司たちに営業経験が乏しい中、営業担当者をどのように育成していけばいいのか?

この難問を解決したのが、営業プロセスの定量化と、所長の営業マネジメント力向上でした。西日本を統括している西日本サービス部長の東野様をはじめ、さまざま立場でこの取り組みを推進している皆様にお集まりいただき、お話をうかがいました。今回は、その前編です。

※当インタビューは、2020年3月中旬に、写真撮影時以外は参加者全員マスク着用のうえ、実施いたしました。

 



営業とエンジニアが連携してソリューションを提供

 

------ サービス本部 西日本サービス部の事業内容を教えてください。

東野 ダイキン工業はサービスの拠点を、東日本、中部、西日本、九州と4つに区分していて、全国に59カ所のサービスステーション(以下、SS)を持っています。私たち西日本サービス部は、近畿、山陰、山陽、四国を19カ所のSSでカバーしています。業務内容としては、弊社のエアコンを使っていただいているお客様に対する修理対応と「お客様の抱える空気環境のお困りごとにソリューションを提供」という事業方針のもと、ソリューションビジネスに力を注いでいます。

 

------ ソリューションビジネスというと例えばどのようなことですか?

金山 お客様とのつながりを強化して、空気環境やエネルギー効率の改善を進めるビジネスです。事業全体を100とすると半分の50が整備提案、15が保守、35が修理・メンテナンスという比率に今ではなっています。整備提案というのは、例えば今使っていただいている機器を延命するためのオーバーホール、地球環境を守りながら大幅な省エネにつながる主要部品の交換などいろいろな商材・メニューがありますが、この部分を営業担当者とエンジニアがタッグを組み積極的に推進しています。

 

------ サービス部門が営業担当者を抱えているというのはユニークな気がしますが、どのような経緯でそのようになったのですか。

東野 以前でしたら、修理や大型機器の整備作業などで、ある程度の売上を上げてきました。しかし年々事業目標が増えていく中、いつまでも「待ち」の姿勢では目標を達成することはできません。攻めていかないといけない。では、攻めていくにはどうしたらいいのか。こうした課題を解決するために、2009年、全社的に大きな組織改革が行われ、サービス本部として、主に研究開発部門や製造部門から、営業担当者を大人数迎え入れることになりました。西日本サービス部にも、多くの営業担当者が増えました。

もともとサービス部門というのは、ユーザー様と直接お会いすることができる部署です。お客様の声を聞いて、ニーズに合った商材を提供したり、社内にフィードバックして開発につなげたりすることもできます。お客様と接する時に営業的な視点が加わることで次のビジネスに結び付けられるのではないか。そういう主旨で、サービス部門に営業担当者が加わることになりました。

 

------ 営業の人たちが大勢増えて、困ったことはありましたか?

東野 どうやって教育したらいいかわかりませんでした。正直、私たちも現場のたたき上げで営業的なこともやってきましたが、サービス部門はもともと全員がエンジニアです。営業担当者に対してのマネジメントや、どうやってモチベーションを上げていけばいいのかといったノウハウはもっていませんでした。モチベーションを上げるには、実績をきちんと評価することが大事ということはわかるのですが、それをどう実現したらいいのか。模索している時、ジェックさんとの出会いがあり、サポートいただくことができました。

 


営業プロセスを「見える化」して「つまずき」を知る

 

------ どのように営業担当者を育成しているのかを教えてください。

宇佐美 1つ目の取り組みとして、営業プロセスチェックシートというものを作り、営業活動の「見える化」を始めました。私が横浜から来た時は、その原型がすでに西日本サービス部にあり、何だろうこれ、と思いました。

東野 最初はトップ営業が何をやっているかを知り、皆でそれを真似ようという所からのスタートでした。お客様の所にどれだけ訪問して、どれだけ引き合いがあり、どれくらい受注をいただいているのか。例えばトップ営業が一日に何件訪販活動をしているのか、同じ活動量を他の人もやってみよう…、というような形でした。

しかしこれだと単に数字を追いかけているだけで成長が期待できない。そこで前任の部長が、営業プロセスの中で「どこでつまずいて、何ができていないのか」それを定量的に見ていくために、ジェックさんと相談しながら営業プロセスのチェックシート作りを始めたのです。

久保 ちょうど私が育児休暇から復帰した頃から取り組みが始まったので、最初から関わらせていただきました。訪問件数に対して引き合い率がどうか。引き合いをいただくために相手のキーパーソンというか決裁権を持っている人に会えているのか。その引き合いが受注につながっているのかどうか。そのように営業プロセスを見ていく中で、例えば引き合いがないのは、お客様のニーズを聞き出せていないからではないか。引き合いがあっても受注につながらないのは、本当のニーズが別のところにあるからではないか。プロセスごとの各営業担当者の強み・弱みを見えるようにしたのが、営業プロセスチェックシートです。所長や基幹職と共により使いやすく、見やすいものに進化させています。


------ 営業のプロセスを「見える化」する。そのチェックシートを作る上で一番苦労したのはどのようなことでしたか。

東野 初期段階のところで苦労したことといえば、データを入れてもらうことですね。チェックシートを作るには、日々の日報みたいな形で、営業担当者自身が数字をインプットしないといけない。ただでさえ忙しいのに、さらに余計な仕事が増えるわけですから、定着させるのに最初苦労しました。

久保 日報をつけるという習慣が当社の営業にはなかったので、わざわざキーボードを打たなければいけないということに抵抗があったようです。

 

------ それをどのように克服されたのですか?

久保 年々入力フォームを簡素化して、入力しやすくしました。

金山 社内システムと連動させて、営業担当者の実績を自動で拾えるようにしたのも大きかったと思います。

東野 現在はだいぶ定着しましたね。新人の営業担当者は1日の最初に入力するのが当たり前になっていて、仕事の一環という位置づけになっています。

 


所長との面談で「つまずき」を乗り越える

 

------ チェックシートで営業活動のつまずきを知る。その後は、どのようにしてつまずきをクリアするのでしょうか。

金山 プロセスデータを元に所長と営業担当者が面談し、強みを伸ばし弱みに対して対策を打ちます。そして短期的な目標を設定し次の面談で変化を確認するという面談サイクルを回すことで営業の質を高めています。多忙な所長が面談にじっくり時間をかけることができない為、前回決めた目標を振り返りやすい期間として10日に1度の面談を推奨しており、限られた時間でも効果的な面談を実施することができています。

 

------ 面談を通して営業担当者を成長させるコツのようなものはありますか。

東野 面談で営業担当者に気づきを与えて意識を変えていくためには、指導する所長の技量が必要です。そこで各SSの所長はジェックさんのマネジメント研修を受けて、人材育成のノウハウを学んでいます。所長の意識が変わると、営業担当者のモチベーションが上がって実力も上がり、SSの実績も上がります。それを意識づけしていくことで、少しずつ所長の営業マネジメントに対する意識改革が浸透していきました。

宇佐美 以前は営業担当者のここが弱点だなと思うと、すぐ口に出して指摘してしまう傾向がありました。「君のこことここが悪いから、こういうふうにしたらいいよ」と、1から10までしゃべってしまう。そうすると、その時はできるのですが、1~2か月すると元に戻ってしまう。研修を受けていく中で、本人に自覚してもらわなければ成長しないということに気づくようになりました。面談の時も「次どうしたらいい?」「どこが悪いと思う?」「どうしていきたい?」と相手の意見を吸い上げるような形で聞くことができるようになりました。

 

------ サービスステーションの所長に成長してもらうために導入したのは、研修だけですか?

東野 どの程度マネジメントに対する意識が変わったのか、所長に対する試験制度を新たに設けました。例えば、指標に基づいて指導ができるか、クロージングのために具体的アドバイスができるかなど、営業マネジメントの到達度を第1段階から第7段階に分け、定期的に試験を受けてもらっています。試験を順にクリアしていくことで、所長が互いに切磋琢磨しより高いマネジメント力を身に付けられています。

 

------ 営業プロセスチェックシートとそれに基づく所長の面談、所長の営業マネジメント力向上研修の実施と試験制度の導入。他に何か、営業担当者育成の取り組みはありますか?

東野 「問題解決OJT」ですね。これはチェックシートとは別の展開で、実際の営業活動の課題にメスをいれていく取り組みです。各営業担当者の実動の案件に対して、ロールプレイング方式で具体的な解決策や突破口を見つけています。

宇佐美 ロールプレイングをした後で、ベテランから新人までいろんな人にアドバイスをもらいます。参加している所長も営業経験がない者が多いので、沢山のロールプレイングとアドバイスを見聞きすることで、自分の引き出しを増やせることがけっこう重要だと思っています。引き出しが増えれば、新人営業担当者が困った時にアドバイスを出せますからね。

東野 チェックシートから面談、問題解決OJT、この2つが両輪になることで営業担当者の成長を促して突破力を養う。そういうイメージです。

 

------ 育成システムを浸透させていく上で、工夫したことがあれば教えてください。

秋山 営業フォロワー制を取り入れたのもよかったと思います。マネジメント研修を受け、所長の営業活動をサポートする人材のことをフォロワーと呼んでいます。所長という立場は非常に忙しいので、フォロワーが代わりに営業担当者の面談をしたり相談に乗ったりする取り組みを3年ほど前から始めました。フォロワー制度を導入してから、育成プログラムがさらに軌道に乗ったように感じています。

(次回に続きます)

 

 


■ ダイキン工業 サービス本部の省エネ事業

「空気」と「環境」の新しい価値で 世界に答えを出していきます

ダイキンがめざすのは「環境負荷を減らしながら、人や空間が健康で快適な社会」です。ダイキンの主商品である「空調機」は20世紀初頭に発明され、世界中の暮らしや労働に変革をもたらしましたが、一方でその普及は電力の消費拡大にもつながり、環境、とくに気候変動へ影響があることもわかっています。だからこそダイキンは、空気と環境の新しい価値で、地球規模の課題に挑み続けます。

そのような中、私達サービスがご提案している省エネ事業は、地球環境に貢献しつつお客様と私達が利益を享受し合う事ができるとてもやりがいある仕事です。若手所員も多く活躍しています。  

ダイキンのビジョン(ダイキン工業ホームページ) >>

 

■ お客様と繋がる

私達が今、力を注いでいるのがIoTです。25年以上積み重ねたIoT技術で24時間空調機の遠隔監視を始め、お客様の法令対応や働き方改革をサポートするソリューション商材を拡充しています。

サービスカタログ一覧(ダイキン工業ホームページ) >> 

 

<ダイキン工業株式会社>

ダイキン工業株式会社 本社所在ビルより ぴちょんくん を臨む

 

●本社 大阪市北区中崎西2-4-12 梅田センタービル

●創業   1924年10月25日

●設立   1934年2月11日

●資本金 85,032,436,655円

●従業員数 単独 7,499名、連結 80,369名

●グループ会社数 連結子会社 313社(国内29社、海外284社)

●事業内容 空調・冷凍機、化学、油機、特機、電子システム

(2020年3月31日現在)

https://www.daikin.co.jp/

 



インタビュー 一覧