京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社(前編)

サービス成長戦略を実現する人材育成で、
顧客への価値提供向上を図る



京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社
サービス事業本部 本部長  岩﨑 洋一 様

京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社は、プリンターと複合機、複写機、およびサプライ製品等の販売・メンテナンス等を通じて、お客様のドキュメント環境を正確に把握し、コスト削減や生産性向上などユーザーが抱える経営課題のソリューションを提供している企業です。創業以来、お客様のニーズの変化に合わせ、先端技術を展開・探究しておられます。

数年前より、サービス戦略を実現するために、「ファン客を創造し続ける人材と組織づくり」の変革に取り組んでこられました。そのお取組みについて、同社サービス事業本部本部長の岩﨑洋一様にお話をお聞きしました。

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われわれの強みは、お客様の職場、
お客様が働いている環境に呼んでいただけること

 

ジェック 岩﨑様がサービス事業本部の本部長に就任されて6年、サービス事業やカスタマーエンジニアの成長において、どのようなビジョンを描き、どのような課題を解決されようと取り組まれてこられたのか、その変革のプロセスについてお聞かせください。

 

岩﨑 私は、サービス活動の現場でお客様に対応しているカスタマーエンジニア(以下、CE)が、いかに自分の仕事に誇りとやりがいを持ち、日々の仕事に頑張って取り組むことができるか。これが一番重要だと思っています。

セールスには日々の売上目標があって数字として見えやすく、それがモチベーションになります。しかし、CEというのは、機械を直して当たり前、お客様に満足していただいて当たり前で、顧客満足度を数字で表すのは非常に難しく、モチベーションを保つのも難しい。CEが、自分の仕事に誇りとやりがいを持ち、どのように会社に貢献できているのかを実感できるようになり、会社からも認められる存在となるためにはどうすればいいか、ずっと考えてきました。

当時CEは、ビジネスにおけるキーパーソンである経営者とお話をする機会が持てていない現状に、一番のポイントがあるのではないかと気付きました。どれだけ一生懸命に対応しても、京セラのCEがどんな対応をしているのかお客様のキーマンには伝わっていない。結果として、いろいろな機会が失なわれてしまい、信頼関係を築けず、ビジネスを大きくすることができないのではないか。

では、どうしたらCEがお客様のキーマンと話ができるだろうかと考えてみると、われわれの強みは、お客様の職場、お客様が働いている環境に呼んでいただけること。この機会を生かして積極的にキーマンと話をするためには、お客様に課題を伺い、その課題解決を提案する、提案活動をやっていくしかないと考えました。

 

ジェック それを打ち出されたときの、皆様の反応はいかがでしたでしょうか。

 

岩﨑 最初、CEからは「いや、私は修理するのが仕事ですから」という声もありました。しかし、これからの仕事のあり方を考えてみると、技術進歩によって機器の故障も減り、遠隔で機器を監視できたり、現場に赴く以前に予測して修理対応ができたり、業務内容も働き方も大きく変わってきています。CEが自らの存在価値を持つためには、やはりCEにしかできないことをやろう。お客様先にうかがう機会を得たら、お客様がまだ気づいていないような課題をしっかり引き出し、その課題解決の提案をしていこうと、取り組みを始めました。

CEの多くが、IoTがどんどん進化するといずれ自分の仕事がなくなるのではないかと不安を感じていました。そうじゃない、CEの仕事そのものが変わっていくんだと、意識を変えて、そこから徐々に行動を変えていくところまで、少しずつですが、導くことができているのではないかと思っています。

キーマンとお話をする機会をいただくようになると、いろいろなお困り事を伺ったり、相談をいただいたりするようになり、それが新たな受注に結び付くケースが生まれてきました。CEのモチベーションは上がり、やる気も出てきて、何より顔色が変わってきました。最初はすばらしい提案ができなくてもいい、小さなことでもいい。「うちの会社にとって大切なCEだな」と思っていただければ、お客様の側からいろいろな課題のヒントをいただくことができます。

これが、まさしく今回学んだ「ファン客創造」なのではないか。この言葉は、われわれの「京セラフィロソフィ」ともしっかりと合っていると思っています。「お客様第一主義」、ビジネスの基本はここにある。お客様のためになることをやらなければ、われわれのビジネスも発展しない。では、CEとして一番お客様のためになることはなんだろうと、一人ひとりがよく考えて取り組んでいこう。そこを深く掘り下げていくと「京セラフィロソフィ」の一節一節と非常に響き合ってくるんですね。

 


ショールームに掲示されている「京セラフィロソフィ」


「ファン客を創造し続ける人材と組織づくり」スタート

 

ジェック 2017年より「信頼を基盤とした提案活動を通じて、ファン客を創造し続ける人材と組織づくり」をテーマに変革のお取り組みがスタートしました。御社は、社是、経営理念に基づく経営を徹底され、「京セラフィロソフィ」教育も徹底されておられます。具体的なお取り組みをお聞かせいただけますでしょうか。

 

岩﨑 「われわれはどうあるべきか」というところは自分たちで考えることができたとしても、「自信の持てないCEの意識や行動をどう変えるのか」というところについては、もっと上手に、具体的にわかりやすく、彼らと目線を合わせて話す必要があるのではないかと考えました。社内で言われるのと第三者から言われると聞こえ方も違い、「会社が言ってることって、こういうことなんだな」と腹に落ちやすくなる。プロにお手伝いいただくメリットは大きいと思い、まずCEのトレーニング(研修)から始めました。

意識診断の結果も参考にしながら、何が課題で、何がトレーニングのポイントなのかをしっかりと合意した上で始めることができましたので、経営者の理解をしっかり得ることができたように思います。CEも、外部のトレーニングを受けられること、それが会社の理念や方針、「京セラフィロソフィ」ときちんと合致していることにもものすごく納得感があり、「こういうふうにつながるのか、それならば頑張ってやってみよう」と、意識が変わり、行動に移せているのだと思います。

あらためて課題と感じた点は、お客様のデバイスに対して関心が先に立ってしまって、まだまだお客様の業務に対しての関心が低い点です。お客様の機器を止めてしまった場合に、それを解決するのは当たり前、さらに踏み込んで、お客様の業務にどんなご迷惑をお掛けしたのか、業務全体にどのような影響があるのか、お客様としっかりとお話ができるというところまで、これからもっと勉強していかなければいけない。大きな課題です。

 

ジェック 課題も見えてきたということですが、どのような変化が現場では起こっていますでしょうか。

 

岩﨑 今回、徐々に、CEの仕事に対する取り組み姿勢が変わりました。機器に関する情報にとどまらず、お客様の情報が上がってくるようになり、成果を出すようになっています。管理者層にしてもうかうかしていられないと刺激を受けて、うまく相乗効果が働いているようです。

当初は、トレーニングを受けたメンバーのボトムアップによって、マネジメントのレベルを上げていこうと考えていましたが、意識や行動が変わってきたメンバーに対して、どのようにマネジメントすればさらに成果が上がるのだろうかという課題が見えてきて、新たにマネジャーを対象に、マネジメント力向上の取り組みをスタートしました。メンバーをどう動かせばいいのか、個々の能力をどうしたら引き出せるのかなどは、これまで管理者の資質に任せていたように思います。一人ひとりの課題にかなり深く入り込んで取り組んでおり、これから非常に大きな成果が出てくるのではないかと期待しています。 

 


CEやセールスの垣根を越えて「アドバイザー」になる

 

ジェック 視野を広げて業務全体を見渡せるようになれば、機器をどのように活用して効率を上げ、新しい価値を生んでいくのかをお客様と共創することができる。CEの皆様の存在意義はさらに高まっていくと思います。

お客様にも認められ、社内の方たちにも誇れる存在を目指して、さらにどのような取り組みを進めていかれるのか、今後の展望をお聞かせください。

 

岩﨑 サービス事業のあり方やCEのあり方を考えて、彼らが少しずつ変わってきているのを見ていると、サービス事業本部だけでなく、組織全体としても変わっていく必要性を感じました。今年4月、大きな組織変更をいたしました。従来、CEはサービス事業本部、セールスは営業本部と、職種で部門を分けて業務を行っていましたが、同じ職場で働く者同士が違う組織で活動していては、成果は十分に上がらない。営業本部にセールスもCEも入り、一つの組織としてお客様に対してしっかりと取り組んでいこうと考えています。

これからわれわれがやっていかなければいけないこととは何か、どんなサービスをお客様に提供していくのか、そしてそのサービスの範囲はどうあるべきなのか、この半年間、徹底的に考えてきました。極端な話をすると、将来、セールスやCEといった職種はなくなって、お客様に対する「アドバイザー」という職種に一本化されるのではないかと思っています。

技術が進歩し、ほとんどの機器がインターネットでつながって、すべてリモートで見えるようになったとしても、お客様のお困りごとや真の課題は見えない。そこを、セールスであれ、CEであれ、「アドバイザー」としてしっかりと見て、お客様に対する課題解決、ソリューションにしっかりと取り組む。それが、これからのわれわれの業界で働く者たちが果たすべき役割となっていくのではないかと思います。

世の中にはいろいろなソリューションがあります。お客様自身が、自分たちの課題を認識されていると、自分でその課題解決の道を探していくことができます。しかし、何が課題なのかにお気づきになっておられないお客様が非常に多いのだろうと思います。だからこそ、そこは「人」の力でしっかりとお客様の業務を理解し、課題解決策を提案する。これこそがわれわれの目指すビジネスなのです。

今年10月、われわれのブランドメッセージ「Put knowledge to work to drive change. さらなる変革のために、知識を仕事に活かす」を発信し、お客様に体感いただく場として「「Knowledge Place(ナレッジプラス)」*をオープンしました。ここを、お客様のお困りごとを伺い、課題解決によって新しい価値を一緒に創造していく場として活用し、われわれの「アドバイザー」としての役割をしっかりとお客様にアピールしていきたいと考えています。

一方で、サービスとは何かとひも解いていくと、お客様の課題解決に限らず、われわれ社内の課題にも目を向けて、それを改善、改革していくのも一つのサービスメニューだと思います。これらに取り組み、成果を数字として出すことができれば、お客様に対して説得力のある一つの成功事例になります。これから重点的に取り組んでいかなければいけないソリューションだと思っています。

 

ジェック 市場の変化を一番敏感に感じ取っているCEの皆様が、ソリューションを実現しながら収益の柱を作り、社内にイノベーションをもたらすような状況ができれば、組織全体が大きく変わっていくのではないかと思います。顧客接点を中心とした情報のフィードバック体制を作りながら組織全体が市場に向かって歩んでいく。これが実現できる組織づくりと人づくりをこれからもしっかりとサポートしていきたいと考えています。

ありがとうございました。

 

「Knowledge Place ナレッジプラス」

京セラドキュメントソリューションズグループのブランドコンセプト「Put knowledge to work(知識を仕事に活かす)」を体現する場として、2019年10月1日、東京・虎ノ門にショールームをオープンした。

「Knowledge Place ナレッジプラス」とは、「知識を加える、増やす」「知識を有益にする」「知識が集まる広場」を目的に、多くの人々が集い、交流し、その知識と知識が交流することで、新たなビジネスの価値が共創され、その可能性を最大限に引き出す、まさに「知識の広場=ナレッジプラス」。

さまざまな用途で使用できるフレキシブルなデザインを重視し、1対1の商談、ディスカッション、セミナーなど多様なニーズやシーンに対応できる可変性のある開放的な空間とし、ミーティング、セミナーといったイベント、機器のショールームとしての展示などから、来訪者が得た知識について、深く、ゆっくりと集中して思考したり、気軽に話し合えたりする居心地の良いカフェ空間を備えた。

 「Knowledge Place ナレッジプラス」



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