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「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 五.達成のプロセスを味わう(後編)

本シリーズは、「お役立ち道の経営」推進に欠かせない「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介しています。

今回は、第五条「達成のプロセスを味わう」の後編です。




目次[非表示]

  1. 1.「達成のプロセス」を味わうとは
    1. 1.1.お役立ちの意味を考える
    2. 1.2.プロセスから学ぶ
    3. 1.3.私の場合
  2. 2.「達成のプロセスを味わう」為の留意点
  3. 3.「味わう」のは「蜜の味」ばかりではない



「達成のプロセス」を味わうとは


お役立ちの意味を考える

前回、「達成のプロセス」をご紹介しました。

仕事の「今」を愉しんでいる人達は、皆、この「達成のプロセス」を認識しているのかと言うと、必ずしもそうは言いきれない部分があるのが現状です。

  • 「組織の理念やビジョンはあまり関心が無い。でも、この技術を使う仕事は好き」
  • 「お客様と接することができる今の仕事は好き」
  • 「社内の人をサポートする今の業務が好き」
  • 「得意だから好き」
  • 「経験を積んでいるから好き」

と言う場合や、人達がいることも多々あるからです。

そういう人たちは、それぞれの仕事の「今、ここ」で、自分にできることが、自分以外の人達に、多少なりとも、喜んでもらえていると言う実感があることが多いものです。そして、その実感は、「役立つ喜び」として、仕事を愉しむための原動力になっている場合が多いのです。


プロセスから学ぶ

経営トップの望みは、「目の前の仕事を愉しみ続ける」ためにも、組織全体の理念・ビジョン等の達成のプロセスそのものを味わって(愉しみ・学び・成長する)、仕事に取り組んでもらうことです。

組織全体の達成プロセスと、一人ひとりの業務の愉しみが連動していれば、個人の喜びと組織全体の成果に相乗効果が生まれてくることを経営トップは体験上、知っているからです。

では、どうすれば、「一人ひとりの仕事の喜び」と「組織全体の達成プロセスを味わうこと」を両立できるのかを考えたいと思います。


私の場合

私は、ジェックに中途採用で営業職として入社しました。入社1年~2年の間は、組織全体を考える余裕はなかったことを思い出します。当時から、全社の理念や方針は、強く強調され、それに基づく、様々な動機付けの企画が、各部門で、毎日のように実施されていました。

例えば、成功事例発表、社内キャンペーン(個人間やチーム間競争)での動機づけ、朝礼や週礼、月次の上司との目標統合とチェック対話、全社員の方向づけを行う全社会議、四半期ごとの合宿勉強会、結束力を高めるための飲み会や社員旅行等、次から次へと、方針を浸透させ動機づけるための手が打たれ、会社の業績も右肩上がりでした。

しかし、私は、さほど愉しいとは思えずにいました。同期の中でも、業績成果で後れをとっていた新人時代には、あまり、全社の企画は、喜べなかったのかも知れません。



そんな日々を過ごしていたある時、自分の中にあるお役立ちの意識が大きくなった体験をしました。それは、あるお客様との出会いでした。そのお客様と、何度も話をするうちに、お客様の20年後の姿を考え、それを実現するための課題を解決するためのプログラムを提案する機会がありました。

その時に、自分の中に「(自分の真価を発揮するために)業績を上げたい」という意識よりも、「このお客様のお役に立ちたい」という意識の方が強いのではないか、と考えるようになりました。さらに、「お役に立つ(お客様の成果が上がる)」というプロセスをお客様と体験すること、目の前の問題解決だけでなく、お客様の「なりたい姿」実現のためにお役に立つことが、自分の喜びでもあり愉しみでもあることに気づきました。そうして、今の仕事を通じて、お客様のお役に立つことで、自分の真価を発揮したいと考えて、その実現のためにスキルを磨くようになりました。

この頃から、組織として企画された様々な動機づけの意味が理解できるようになり、自分の「今の仕事」だけでなく、組織全体の「達成のプロセス」に対する理解が進み、愉しめるようになってきました。



「達成のプロセスを味わう」為の留意点


組織全体の達成プロセスを理解し、自分にとっての意味を見出すには、一人ひとりの中にある「お役立ちの意識と喜び」に焦点を当てることです。お役立ちの意識が大きくなると、「長期的・大局的」な視点で、お役立ちの時間軸や対象が次第に拡がってきます。そして、そのような人がチームに増えてくると、互いに強みで連携し、知恵を出し合い、たたえ合って、市場のお役に立つことを共通目標としたチームや組織に成長します。

そうすれば、経営トップの「理念・ビジョン達成のプロセスを味わってほしい」と言う望みと、一人ひとりやチームの「仕事の喜び」が統合され、一致していくことが促進されるのです。それは、経営トップの「長期的・大局的・根本的」な「高志」を理解することが、促進できるだけの一人ひとりの視野を広げることができるようになっていくからです。

では、その留意点をまとめておきましょう。


「達成のプロセスを味わう」為の留意点

  1. 「お役立ちの意識と喜び」を想う:日々の業務は、お役立ちの喜びと意識を強化するプロセスとして意味付けする
  2. 仮説を創る:対面する仕事に対して、「どういう時に、どういうスタンスで、何を意識すれば、お役立ちの知恵が湧くのか」という、お役立ちのイメージを描き、取り組む
  3. 検証の習慣を創る:一つひとつの業務は、お役立ちイメージ(どういう時に、どういうスタンスで、何を意識すれば、お役立ちの知恵が湧くのか)を検証できる機会と捉える
  4. 「お役立ちビジョン」を創る:お役立ちイメージに基づき、中期的に、ありたい姿、ありたい状況を5W1Hで可視化する
  5. 成功期待感の持てるシナリオを創る:成功を積み重ねるイメージでストーリーを創る。自分ひとりで成功期待感が持てない場合は、組織の力を活用する
  6. 小さな成果・即ほめる:目標に至るシナリオの節目ごとに目標を立て、細分化し、小さな目標を立てる。少しの頑張りで達成できる目標にして、「自分でもできる」という自信を積み重ねる。自信がつき勝ち癖がついてくれば、少し目標をあげる
  7. 達成度合いをチェックする:遊び(例えばゲーム)と同じように、ゴールに対して、何がどこまでできたかをチェックする。「○%できた」と数値化する(正確な数値でなくても良い)
  8. 全てを学びの機会とする:プロセスの目標が未達成の時でも、自分を責めない。学びのチャンスと捉え、体験を味わう
  9. できることを考える:「どうすればできるか」を考える習慣をつくる
  10. 目的を意識する:自分の仕事の目的、組織全体の目的を理解することで、心の芯をもつ
  11. 「今、ここ」に集中する:「今、ここ」に自分の全ての理解とスキルが現れる。よって、「今、ここ」でのベストを目指す
  12. 相手を「共創のパートナー」として尊重し、コミュニケーションをはかる:「お互いの強みを尊重し、共通の目的のために、知恵を出し合うパートナーである」と認識し、新たな知恵の創出・イノベーションを目指す

以上の留意点を、一人ひとりのセルフマネジメントのツールとして、また、リーダーの指導項目として、活用することで、個人としても、組織全体としても、「達成のプロセスを味わう」ことが可能になり、仕事の謳歌が促進されることになるのです。



「味わう」のは「蜜の味」ばかりではない


経営トップの皆様なら、おわかりのことと思いますが、「味わう」ということは、「蜜の味」ばかりではない、つまり「楽しい」だけではなく、「苦しい」「くやしい」「きつい」など、いわゆる負の感情も伴うこともある、ということです。



今回、この原稿を書くにあたり、私にとって「味わう」というのはどういうことか、と考えた際に、真っ先に出てきたのが「苦虫をかみつぶす」ということでした。つまり、私の価値観は、どちらかというと、「責任感に基づいて自分を鼓舞すること」「大きな壁に全身で打ち込み、乗り越えること」等に手応えを感じる傾向があるようです。

「甘み」以外にも、いろいろな味があって、味わい深くなるのと同じで、振り返るとそういう経験も含め、達成のプロセスを愉しみ・味わって現在に至るのだと思いました。そして、これを乗り越えた人やチームは、しなやかで強く、成長し続けることができるのではないかと考えています。


皆様の参考になれば幸いです。



葛西 浩平
葛西 浩平
株式会社ジェック 代表取締役会長

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