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「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 四.強みを磨く(後編)

本シリーズは、「お役立ち道の経営」推進に欠かせない「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介しています。

今回は、第四条「強みを磨く」です。

前編では、「一人ひとりが自分の強みで、市場やチームに貢献し、仕事を謳歌してほしい」との経営トップの想いを確認しました。中編では、その強みの発見や、お役立ち実現のポイントを確認しました。今回の後編では、私の体験を交えた、実践ポイントをご紹介します。




目次[非表示]

  1. 1.私の場合
  2. 2.経営現場で、「強み」を発揮しよう
    1. 2.1.経営現場での「強み」の発見
    2. 2.2.経営の四つの機能と「強み」
    3. 2.3.実践上の落とし穴



私の場合


私は、今から約35年前、32歳でジェックに入社しました。時代は、バブル経済で湧く直前でした。それまでは、インテリア商社で勤めており、それなりに、実績に基づく自信は持っていました。しかし、ジェックに入って、初めての飛び込み訪問の営業で、自分のそれまでの自信は、ことごとく崩れ去りました。なぜならば、当時、新人は、新規開拓でゼロからお客様を創るために、爆発的に売れていた「営業商談力コース」を売るための、商品説明力とクロージング力が求められていたからです。自分が強みと思っていた、コンサルティングの姿勢や、取引先と協力関係を作る力は、新規開拓後、お客様との信頼関係を進めるうちに必要となってくるもので、最初はほとんど活用できなかったのです。

成果も出ず、仕事に行き詰まりを感じていましたが、ジェックには、「お役立ち」という概念があることを、教わりました。そして、「お客様が存在価値を高めるために、私やジェックは、何が役立てるか」ということを意識し続けて行動しているなかで、ある時、自分の「強み」を再発見した時がありました。

それは、P.F.ドラッカーの「強みに集中せよ」というメッセージを読んだ時のことです。(P.F.ドラッカー『経営者の条件』1966, 野田一夫・川村 欣也訳, ダイヤモンド社)

自分の強みは何だろう? と考えた時に、もともと強みと思っていた、コンサルティングの姿勢や、お客様と協力関係を創る力の背景のところにあるものとして、「お客様が、市場で選ばれ続けるには、どういう能力が組織の全体の構造として必要になるのか」を構造的に考え理解しようとしている自分がいることに気づいたのです。これは、P.F.ドラッカー流に言うと、“お役立ちの構造を構想する力”と自分なりに言語化しました。

その後、お客様の未来の構想をお客様と共に練る時や、自社の新たな戦略を構築する時など、様々な経営判断をしなければならない時に、“お役立ちの構造を構想する”という自分の「強み」が活用できていると今では認識できるようになっています。



経営現場で、「強み」を発揮しよう


経営現場での「強み」の発見

P.F.ドラッカーは、様々な著書のなかで、「強み」について触れています。

「自らの強みは、フィードバック分析によって知ることができる。何かすることを決めたならば、何を期待するかを書きとめる。九か月後あるいは一年後に、その期待と実際の成果を照合する。期待どおりの成果、期待を越える成果の記録から、二、三年もすれば、自らの強みを知ることができる。こうして知った自らの強みを仕事と成果の向上に利用すればよい。…(略)『明日を支配するもの(※)』」


P.F.ドラッカー『ドラッカー365の金言』(上田惇生訳, 2005, ダイヤモンド社)

※『明日を支配するもの-21世紀のマネジメント革命』(上田惇生訳, 1999, ダイヤモンド社)

やり方は、それぞれに工夫すればよいと思います。しかし、「自分には、様々な能力がある。長所もあれば、成果(価値創造)につながる強みもある」という自分の能力観(事実認識)を持つことが前提になります。

そして、その良さをニュートラルに見つけるには、メタ認知を働かせることと、自分自身の美点を凝視することが前提になることは言うまでもないことです。


経営の四つの機能と「強み」

さらに、経営トップ層をチームとして考えたときに、経営を機能で分けると、四つの機能が必要であるといわれています。それは、「起業家・産出者・管理者・統合者」に分けられます。それぞれの機能は以下のような主旨になります。

起業家(Entrepreneur) 独創性に富み、ビジョンや新規性に富む。
産出者(Producer) 生産能力に富み、専門性技能に富む。
管理者(Administrator) 仕事の管理に優れ、秩序作りに富む。
統合者(Integrator) 組織全体をまとめることに富み、納得性を取ることに富む。


参考:イチャック・アディゼス『アディゼス・マネジメント』風間治雄訳, 1985, 東洋経済新報社



また、これらの四つの機能に一人で長けている人はめったにいないとも言われています。だから、経営ボードを一人の人間として見立て、それぞれの「強み」を活かす形でチームとして動いていけばよいのです。そして、これらのバランスが良く機能している時に、成長が持続するとも言われています。


実践上の落とし穴

かつて、私も、役員会をチームとして、それぞれの「強み」の認識を共有化して、上記の四つの役割に分類し、機能させようとしたことがあります。

しかし、落とし穴がありました。

その当時の経営チームは、第二創業期として、変革をしなければならない時期であったにも関わらず、起業家と統合者の機能よりも、管理者と産出者の機能が強くなってしまいました。それは、安定期には良いのですが、変革時の強みには、物足りないものとなり、変革に長々と時間と労力がかかってしまったのです。これは、各自の強みと役割の統合不足であったことを学んだことがあります。

いずれにせよ、自分がまだ気づいていない「強み」となる能力は、お役立ちの精神と技量を磨き続けていくことで、開花されます。お役立ち道の生き方を進め、自分の「強み」を発揮していくことで、個人としても自信が積み上げられていくのです。しかも、経営幹部のチームワークとしても、お役立ち道という社会的使命を共通の目的にすることで、経営チームの強みの発揮がより強化されていくのです。

自分と組織の「お役立ち意識」に集中し、自分の「強み」を、仕事を通じて、発揮していくビジネス人生を共に歩めれば幸いです。



葛西 浩平
葛西 浩平
株式会社ジェック 代表取締役会長

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