
コミュニケーションの落とし穴は、「つもり」にある
「ちゃんと説明したはずなのに、伝わっていなかった」
「そんなつもりで受け取ったわけではありませんでした」
職場では、このようなすれ違いが日々起きています。
マネジャーは「伝えた」と思い、メンバーは「理解した」と思っている。
しかし、実際には認識がずれていた――。
こうした行き違いは、決して珍しいことではありません。
そして、その原因は話し方の上手・下手ではなく、お互いの「つもり」にあることが少なくありません。
「伝えたつもり」と「分かったつもり」
マネジャーは、
「前にも説明した」
「これくらいは分かるだろう」
「考えれば理解できるはずだ」
と思って話していることがあります。
一方、メンバーも、
「きっとこういう意味だろう」
「たぶんこの進め方で合っている」
「今さら聞き返しづらい」
と、自分なりに解釈して仕事を進めてしまうことがあります。
どちらも悪気があるわけではありません。
しかし、「伝えたつもり」と「分かったつもり」が重なったとき、誤解が生まれます。
SNS時代だからこそ起こりやすいコミュニケーション
こうした「つもり」は、現代のコミュニケーション環境とも無関係ではありません。
私たちは日常的に、LINEやSNS、チャットツールなどで短い言葉を交わしています。「あれ」「これ」「例の件」だけでも、お互いの文脈を共有している相手であれば会話が成立します。このような環境では、細かな説明をしなくても「察する」ことが当たり前になっています。
これは新人だけでなく、世代を問わず多くの人に共通する変化と言えるでしょう。
一方、職場では立場も経験も価値観も異なる人たちが仕事をしています。
だからこそ、「これくらい伝えれば分かるだろう」「たぶんこういう意味だろう」という思い込みは、誤解を生みやすくなります。
職場で求められるのは、「察する力」だけではなく、「確認する力」なのです。
誤解は、やがて信頼の問題になる
コミュニケーションの行き違いは、単なる情報伝達のミスでは終わりません。
伝える側は、「何度説明しても伝わらない」
聞く側は、「あの人はこちらを理解しようとしていない」
そう感じ始めると、お互いへの不満が積み重なり、やがて信頼関係にも影響を及ぼします。
だからこそ、コミュニケーションの目的は、「話すこと」ではありません。
相手がどのように理解したかを確認することまで含めて、初めてコミュニケーションは成立すると言えるのではないでしょうか。
「問いかける習慣」が信頼を育てる
では、どうすれば「つもり」を減らせるのでしょうか。
大切なのは、「確認すること」ではなく、お互いの理解をすり合わせるための問いかけです。
例えばマネジャーであれば、
「私の説明で分かりにくいところはありませんでしたか?」
「進める中で気になっていることはありますか?」
「私も思い込みがあるかもしれないので、違和感があれば教えてください」
そんな問いかけによって、「正しく理解できたか」を試すのではなく、お互いの認識をすり合わせる場をつくることができます。
一方、メンバーも、
「私の理解では○○だと思っていますが、この認識で合っていますか?」
「私はこう受け取ったのですが、意図とずれていないでしょうか?」
と、自分の理解を伝えながら問いかけることで、認識のずれを早い段階で修正できます。
ここで大切なのは、相手に答えを求めることではありません。
「自分の理解は、相手の意図と本当に一致しているだろうか」
そんな問いを、自分自身にも向けることです。
私たちは誰もが、自分の経験や価値観を通して相手の言葉を解釈しています。
だからこそ、相手に問いかけることと同じくらい、自分の思い込みにも問いかける姿勢が、より良いコミュニケーションにつながります。
相手に問いかける。そして、自分自身にも問いかける。
「この理解で合っているんだっけ」
この一呼吸が、「伝えたつもり」「分かったつもり」を減らし、相互理解を深めていきます。
コミュニケーションとは、話す技術だけではなく、お互いの理解をすり合わせ続ける姿勢なのです。
マネジャーが相手の理解を確認する。
メンバーも自分の理解を確認し、自らの思い込みを見直す。
コミュニケーションの質は、特別な話し方ではなく、「つもり」を放置しない一つひとつの行動から変わっていきます。
そんな小さなやり取りが日常の中で積み重なることで、「相手を理解しようとする」ことが当たり前の組織へと変わっていきます。








