
「Yes, but…」ではなく「Yes, and…」で創発しよう
ファシリテーションをしていて一番悩ましいのは、「アイデア(意見)が出ない」ことではないだろうか。アイデアを引き出すためのテクニックはたくさんあるが、根本の問題として「アイデアを言って否定されたくない」「誰も同調してくれなかったらどうしよう」「自分のアイデアに自信がない。とんちんかんなことを言って、恥をかくのは嫌」といった心理的な壁があることを知っておきたい。
この心理的な壁を外すためには、どんな発言も「welcome」であることを、ファシリテーターや、その場に参加する人全員が共有しておく必要がある。つまり、発言に対し「そうだね(Yes!)」で受ける習慣をつけるようにしてはどうだろうか。そして、その次に続く言葉を、「でもね」「違うよね」の「but…」ではなく、「それで?」「それに加えてこうしたら?」という「and…」でつないでみてほしい。そうすることで、発言した相手も、「この場は、自分のアイデアを受け容れてもらえる場なのだ」という安心感を得ることができ、その次も発言してみようという意欲が湧くのである。
さらに、「but…」の応酬になると、互いに相容れず、各々のアイデアを披露するだけの場になるが、「and…」でつなぐと、相手のアイデアを受け容れ、そこにアイデアを上乗せしていき、個人のアイデアよりも、さらに良いアイデアが生まれる可能性もある。つまり、創発による、イノベーションを起こすことができるのだ。
自分の価値観に合わない意見を耳にすると、つい「でもね」と口をついて出てしまっていないだろうか。何気ないひとことを見直し、多様なアイデア(意見)を受け容れ、楽しむことが、イノベーションの始まりなのである。