
HR系イベント 2019年の動向を探る
2019年5月29日(水)からはじまった、HR系の二大イベント「ヒューマンキャピタル2019」 「第7回 HR EXPO(総務・人事・経理 ワールド 2019)」がさきほど終わりました。これらのイベントは、人事部門の方にとっては、最新の情報が一度に集められる絶好の機会で、ジェックもかつては、「ヒューマンキャピタル」に数年出展していたことがあります。
例年だと、7月に行われるのですが、オリンピック関連のイベント等で、7月に会場が確保しづらいためこの時期に移動し、来年も今年と同時期の開催を予定していると、懇意にしているイベントのご担当の方からお聞きしました。今回、5月29日(水)の初日に、両イベントをはしごしてきましたので、「完全に私見」で、エビデンスもありませんが、HR系の動向を報告いたします。
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勢いのあるテーマは「健康経営」
今回、会場に入って、感じたのは「いい匂いがする!」ということでした。
数年前より、国から「健康経営」が推奨されていますが、ここにきてようやくクローズアップされはじめたように思いました。もちろん、数年前より、「健康経営」を率先して取り組み、発信しておられる企業もありましたが、一般的には次の項目にも出てくる「働き方改革」の関連法が施行され、企業が次の課題に目を向けはじめたものと思われます。また、「健康経営」の推進を支援する関連サービスが追い付いてきたので、出展が軒並み増えてきた、ともいえるでしょう。
「偏りなく栄養が取れる簡単食品」が安価に試食ができたり(会場内の良い匂いの素)、「健康増進・リフレッシュ効果を促進する飲料」が無料で試飲ができたりと、会場の賑わいの一因にもなっていました。他にも、「心身共に健康を手に入れるスポーツジム系のサービス」「健康管理システム系のサービス」など、「健康」に対する多岐なアプローチが目につきました。
「働き方改革」「グローバル人材」「デジタルラーニング」「キャリア管理システム」は浸透・定着し、目新しい情報は少なめ
ここ数年のメインともいえる表題のテーマですが、一通り新しい情報は出尽くしたという感じがしました。
働き方改革
今年の4月の関連法の施行で、ようやく企業内に「働き方改革」という言葉自体が定着してきました。当社に寄せられるニーズも、「働き方改革って何?」「先行している他社事例を知りたい!」というニーズから、「社員一人ひとりに意識を持たせ、働き方改革を浸透させ、生産性をいかに上げるか」というニーズに、進化してきていると体感しています。今回は、そのため、セミナーも「より成果が高まる事例」が多かったように思いました。
一点、面白いなと思ったのは、「男性学の視点」から、働き方改革や、ワークライフバランスを検討しているセミナー(大正大学の田中俊之准教授と大手食品企業6社による共同企画。リ・カレント社提供)があり、これまで、ダイバーシティも含め、「女性の視点」が多かったこれらのテーマに、一石を投じていたのではないかと感じました。
グローバル人材
かつては、HR系イベントのメインテーマになっていた「グローバル」「グローバル人材」も、「グローバルなんて、当たり前!」というほど、定着をしてきました。以前は、「グローバル研修=語学研修」というイメージでしたが、そこは、モバイルラーニングに移行し、徐々に「グローバル人材」の採用や育成、グローバル経営そのものに焦点が移ってきたと感じます。
デジタルラーニング
数年前から、eラーニングだけでなく、反転学習やMOOC、インストラクショナルデザイン、モバイルラーニング、マイクロラーニング、VR、動画作成アプリ等々、怒涛のような提案があり、来場者の注目度も高かったこのテーマですが、今年は、その延長戦上のサービス提供にとどまっていたかと思います。デジタルコンテンツを活用することで、「学習」が身近なものになり、誰でもどこでも学ぶ環境ができた、という認識が広がった点では、一定の成果があったのではないかと思います。
今後は、AIをはじめ、「科学技術の粋を集めた学び方」や「アクティブラーナーを育てるコンテンツ」、「学びの本質にアプローチするコンテンツ」など、イノベーティブな学びの提案を待ち望みたいところです。
キャリア管理システム
システムに明るくない筆者ですので、あまり動向をつかんでいるわけではありません。が、働き方改革やダイバーシティ(多様化)と並行して、一人ひとりの強みや経歴を、その人のキャリア構築に生かすだけでなく、チームによる仕事が重要視されるにつれ、最適な人材配置ができるこれらのシステムは、ますます重要になってくるのではないかと思います。
「イノベーション人材」は定着するも「Society 5.0」の浸透はこれからか
「イノベーション人材」という言葉は、定着してきたように感じますが、実際にどのように育成するのかは、まだ試行錯誤の段階のようです。創造的な一部の人に任せるのではなく、多くの人から「創造性」を引き出し、イノベーションを起こす組織に進化させるような提案が、今後は必要と思います。これは、「共創型イノベーション」を打ち出している、当社の取り組みテーマでもあります。
昨年秋より、様々な分野で、「Society 5.0」を冠につけたセミナーが増えてきました。しかし、産業界のHR系分野、特に今回のイベントにおいては、「Society 5.0」と紐づけた人材育成・企業変革を打ち出しているブースやセミナーは見つかりませんでした。
当社は、2015年に、日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)に入会して以来、「学校教育」に関する情報を多く得ております。そこで感じたのは、企業教育より、学校教育の方がはるかに先行して教育改革が行われている実態です。例えば、「アクティブラーニング」は学習指導要領に盛り込まれていますし、eラーニングと対面講座を組み合わせた「反転学習」も教育の現場で生まれ行われています。内省を促し深い学びや行動変容につなげる「メタ認知」も、研究も進み、学習現場での実践が当たり前になってきているようです。
日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)で、当社もコンテンツ(無料オンライン講座)を出しております。その中でお伝えしている、一人ひとりの行動を選択する判断基準を変え行動を変えていこうとする「行動理論の改革」(当社の理念の一つです)と、それに関連する「内省的実践家」「メタ認知」「ダブル・ループ学習」等についてのお問い合わせは、教育現場に立たれている教師の皆様からのものが圧倒的に多いです。
これらの取り組みは、「Society 5.0」という社会に必要な人材を創るための試みでもあるのです。
企業は、「理論・理屈より”実”」を取ります。これは、もちろん当然のことですが、教育現場では認知され取り組みが進んでいることが、産業界ではまだ認知されておらず、取り組みが進んでいないというのは、大変もったいないと感じています。産学が連携し、これらの取り組みを促進することが重要と思われます。弊社も、その一翼を担ってまいる所存です。
いかがでしたでしょうか。当初、想定していた以上に「私見」に満ち溢れた内容になりましたこと、恐縮しております。これからの、企業のあり方、人材のあり方について、みなさまとぜひ情報交換ができれば幸いです。