






田端は中堅の技術者。自分のキャリアにそこそこの自信があり、商品開発でも中心的な役割を果たすようになってきている。だから特命で新主力商品開発プロジェクトの選抜メンバーになったときも、それほど意外には思わなかった。全社各部門から選りすぐったメンバーで固めたと社内でうわさのプロジェクトチーム。それだけに、会社の期待の大きさが推し量られる。
しかし、《“開発における組織連携力を高めるためだ”というが、上は現場をわかっちゃいない。技術の真髄を理解しようとしている他部門が、どれだけあるだろうか?果たしてうまくいくのやら・・・》と、田端はひとり、小さくため息をついた。
実際にプロジェクトがスタートすると、田端の悪い予感は的中。営業は技術のこともわからずに“妙なこと”を言ってきて、試作品はことごとくけなされる始末。これが5回、6回と続くと、田端をはじめ、技術側も営業側も、さすがにお互いげんなりとなってきた。はたまた、プロジェクト全体の雰囲気も重く感じられるようになる始末・・・。
次第に進捗も計画から遅れが目立ち始め、ついにはプロジェクトが暗礁に乗り上げ気味になってしまった。営業と技術の意見がすりあわず、話が前に進まないのである。《営業がもう少し技術のことを勉強してくれれば、こんなことにはならないのに!》と苛立ちを隠せない田端。しかし、予定通りプロジェクトを進捗させるためには、とにかく前に進めるしかほかにない。田端は、技術のホープとしての自分なりの立場と使命も考えた。
《この局面を乗り切るためには、商談の場を借りて営業に指導をすることが必要だ!》大きく深呼吸し、早速、思い切って営業のホープ、Nに同行を申し出た。
数日後、早速Nに同行し、とあるお客様企業へと向かった。田端は、最初の訪問先でここぞというタイミングを見計らいながら、お客様に向かって、しかし実は営業のNに聞かせるつもりで話を始めた。田端は、今、自社が最も得意としている技術の話を中心に、どれだけ素晴らしく優れた技術なのか、という点をできるだけ具体的に、平易な言葉を選んで、とうとうと語った。《ここまで分かりやすく伝えれば、少しは理解してもらえるはずだ!》と、心の中でガッツポーズをしているほどの満足感があった。
10分ほどであろうか、しばらくじっと聞いていたお客様は、少し腰を上げ座りなおし、腕組みをしながらじっと田端を見てこう言い出した。「・・・田端さん、でしたね。すまないが、そんな細かい技術の話を聞かされても仕方がないんだよ。それより、うちの会社がどうすればお客様に選ばれ続け、業績が安定的に上がるかの知恵が欲しいんだよ!」
これには田端は面食らった。《技術のことではなく、企業が勝ち残るためにどうしたらいいのかを私に考えろと言うのか?!》
しかし田端はこれまで専門知識と技術を高めることにしか関心がなかったので、突然の問いかけに一言も返すことができなかった。こぶしをぐっと握り締め、お客様と目を合わせることもできずに黙っているほか、何もできなかったのである。
お客様先を出て、帰社する車の中で、しばらく黙って考え込んでしまった田端。《改めて考えてみると、いつの間にか自分の中には“自分の仕事は技術力を高めること。それに専念していれば良い”という固定観念ができていた。つまるところ、俺は自分の作りたいもの(作れるもの)を作ってきただけなのかもしれない・・・》しかし実際にお客様が求めているのは、技術だけではなく、それを導入することでどうすれば自社が勝ち残れるのかというソリューションの知恵だったのだ。
気持ちが落ち着いたところで、同行した営業Nに思い切って尋ねてみた。すると、最近の商談では、今回のようなことをよく言われるとの返事が返ってきた。「だから私たちは全社を挙げてのソリューション戦略に取り組んでいるんじゃないですか」と苦笑しながらNは答えた。
わかっていないのは、自分のほうだった・・・・・!Nに当然のように言われ、田端は二度目の深いショックを受けざるを得なかった。
それからというもの、田端は行動を意識的に変えた。自分から積極的に、業界ごと、案件ごとにお客様の環境変化や方針・戦略を整理するところからはじめ、さらには、お客様が提供している商品・サービスとその戦略とのギャップを導き出し、自分なりのアイデアをまとめた。そして、何とかお客様の要望に応えるため、そのアイデアや自分のまとめた情報を元に、営業とお互いの意見をぶつけ合うようにしたのである。
これまでコミュニケーションの仕方・回数にも偏りがあった営業部門とも、Nとの前回の営業同行をきっかけに関係が進展。形式的だった会議の中で、お客様の成果向上にこだわった有効な議論が展開されるように、少しずつ変わってきている。
しかし、《“開発における組織連携力を高めるためだ”というが、上は現場をわかっちゃいない。技術の真髄を理解しようとしている他部門が、どれだけあるだろうか?果たしてうまくいくのやら・・・》と、田端はひとり、小さくため息をついた。
実際にプロジェクトがスタートすると、田端の悪い予感は的中。営業は技術のこともわからずに“妙なこと”を言ってきて、試作品はことごとくけなされる始末。これが5回、6回と続くと、田端をはじめ、技術側も営業側も、さすがにお互いげんなりとなってきた。はたまた、プロジェクト全体の雰囲気も重く感じられるようになる始末・・・。
次第に進捗も計画から遅れが目立ち始め、ついにはプロジェクトが暗礁に乗り上げ気味になってしまった。営業と技術の意見がすりあわず、話が前に進まないのである。《営業がもう少し技術のことを勉強してくれれば、こんなことにはならないのに!》と苛立ちを隠せない田端。しかし、予定通りプロジェクトを進捗させるためには、とにかく前に進めるしかほかにない。田端は、技術のホープとしての自分なりの立場と使命も考えた。
《この局面を乗り切るためには、商談の場を借りて営業に指導をすることが必要だ!》大きく深呼吸し、早速、思い切って営業のホープ、Nに同行を申し出た。
数日後、早速Nに同行し、とあるお客様企業へと向かった。田端は、最初の訪問先でここぞというタイミングを見計らいながら、お客様に向かって、しかし実は営業のNに聞かせるつもりで話を始めた。田端は、今、自社が最も得意としている技術の話を中心に、どれだけ素晴らしく優れた技術なのか、という点をできるだけ具体的に、平易な言葉を選んで、とうとうと語った。《ここまで分かりやすく伝えれば、少しは理解してもらえるはずだ!》と、心の中でガッツポーズをしているほどの満足感があった。
10分ほどであろうか、しばらくじっと聞いていたお客様は、少し腰を上げ座りなおし、腕組みをしながらじっと田端を見てこう言い出した。「・・・田端さん、でしたね。すまないが、そんな細かい技術の話を聞かされても仕方がないんだよ。それより、うちの会社がどうすればお客様に選ばれ続け、業績が安定的に上がるかの知恵が欲しいんだよ!」
これには田端は面食らった。《技術のことではなく、企業が勝ち残るためにどうしたらいいのかを私に考えろと言うのか?!》
しかし田端はこれまで専門知識と技術を高めることにしか関心がなかったので、突然の問いかけに一言も返すことができなかった。こぶしをぐっと握り締め、お客様と目を合わせることもできずに黙っているほか、何もできなかったのである。
お客様先を出て、帰社する車の中で、しばらく黙って考え込んでしまった田端。《改めて考えてみると、いつの間にか自分の中には“自分の仕事は技術力を高めること。それに専念していれば良い”という固定観念ができていた。つまるところ、俺は自分の作りたいもの(作れるもの)を作ってきただけなのかもしれない・・・》しかし実際にお客様が求めているのは、技術だけではなく、それを導入することでどうすれば自社が勝ち残れるのかというソリューションの知恵だったのだ。
気持ちが落ち着いたところで、同行した営業Nに思い切って尋ねてみた。すると、最近の商談では、今回のようなことをよく言われるとの返事が返ってきた。「だから私たちは全社を挙げてのソリューション戦略に取り組んでいるんじゃないですか」と苦笑しながらNは答えた。
わかっていないのは、自分のほうだった・・・・・!Nに当然のように言われ、田端は二度目の深いショックを受けざるを得なかった。
それからというもの、田端は行動を意識的に変えた。自分から積極的に、業界ごと、案件ごとにお客様の環境変化や方針・戦略を整理するところからはじめ、さらには、お客様が提供している商品・サービスとその戦略とのギャップを導き出し、自分なりのアイデアをまとめた。そして、何とかお客様の要望に応えるため、そのアイデアや自分のまとめた情報を元に、営業とお互いの意見をぶつけ合うようにしたのである。
これまでコミュニケーションの仕方・回数にも偏りがあった営業部門とも、Nとの前回の営業同行をきっかけに関係が進展。形式的だった会議の中で、お客様の成果向上にこだわった有効な議論が展開されるように、少しずつ変わってきている。






今は、言わずもがな、「良いものを効率的に作れば売れる時代」ではありません。「“売れるもの”=“お客様が本当に欲しているもの”を作らなければ売れない時代」であることを全社員が共通のものさしとして共有化すること。・・・これが組織連携の第一歩なのです。




























