






営業所閉鎖という最悪の結論を辛くも免れ、ほっと安堵のため息が海野の口から漏れた。
今日は月末の営業所長会議。海野は地方都市の営業所長としてそれなりの実績を残してきたが、ここ3年ほどは海野の営業所のみならず会社全体の業績も思わしくない。社長は今年からソリューション戦略を打ち出し、起死回生の一打を講じようとしているところである。
《社長だけじゃない、俺だって必死だ!社長の戦略を受けて、商談の進捗管理を週単位に強化したし、メンバーごとにランクアップ率を明確にしてレベルに応じた指導をしている。メンバーも必死に応えてくれようと頑張っている。自社商品を売るための販促ツールだっていくつも作ったし、夜は遅くまでメンバーと商談のロールプレイングだ。一体これ以上何ができる?》
そんなことを考え、会議中に一人悶々としていた矢先、最近所長に抜擢された浅沼が手を挙げた。
「社長!ソリューション戦略を掲げたからには、私たちのマネジメントの内容も変える必要があるのではないでしょうか。もちろんこれまでのように行動量をベースにした管理は大切だと思います。でもそれ以上に、今は需要を創り出す知恵がないことには戦えませんから、その知恵をいかに生み出すかをマネジメントに組み込むことこそ、今の私たちに必要だと思うんです」
《は?・・・知恵を生み出すマネジメント?》海野は首をひねった。
「例えば、今アプローチしている企業が、市場から選ばれ続けるためにはどうしたら良いと思うかとメンバーに問うと、それまで自社商品というフィルターを通してお客様を見ていたのが、市場環境におけるお客様の立場を見るように変わります。すると提案の発想が自社商品の売り込みではなく、自社商品以外にも必要な様々なものを視野に入れたソリューションになり、何とか良い知恵を生み出そうとするんです。そうやってターゲット選定やアプローチの仕方、提案内容、アフターフォローといったすべての顧客接点でメンバーの知恵を引き出していくことが、私たちの役割だと考えます」
「よし、次回はもっとポイントをまとめて具体的に提案してくれ。これを重要テーマとして当面進めていこう。」社長の満足げなその一言で会議は終了した。
海野は次の会議まで待ちきれず、席を立つなり浅沼に駆け寄り、教えを乞うた。「あれは、浅沼さんの営業所でどういう風に進めているんですか?!」
浅沼の答えは意外なものだった。
「いやぁ、実はあんな偉そうなことを言いましたが、毎日メンバーと試行錯誤ですよ。ソリューションって言いながら結局売り方の指導になっているって、実は部下に指摘されて気づいたんです。・・・重要なのは、どうすればお客様の成果につながるかを考え続けることですよね」
海野には正直なところまだピンとくるものはなかった。しかし、《何か、新しいヒントが得られるかもしれない》と、とにかく浅沼を真似て動いてみることにしたのだ。販促ツール作りやロールプレイングよりも、まずは一社一社について《どうすればそのお客様が市場から選ばれるか》を考えて解決策を作るソリューションミーティングを優先して行なうことにした。
実際、やり始めてみると、全く意見が出てこないなど、ミーティングをスムーズに進めることは容易ではなかった。しかし、毎日、毎日、習慣化させることで、少しずつではあるが、今までは出てこなかったような意見やアイデアが、メンバーから出てくるようになってきた。《これは大きな進歩だ!》と海野は感じ始めていた。また、全部、というわけにはいかないが、お客様の成果につながらないと感じる提案内容に対しては、メンバー皆でさらなるアイデアを出し合い、もみこんで再度作り直すなど、妥協せずにやり直しをサポートし続けたのである。
さらに、海野自身も、今までは月末の営業所長会議でしか会わなかった浅沼に、意識的に週1回は電話で連絡を入れ、報告方々、アドバイスをもらうようにした。すると、浅沼からの全く違う視点からのアイデアをもらえたり、また、海野自身が浅沼に「それは気づかなかった!うちでも早速やってみるよ」と言わせるようなノウハウを提供できるようになるなど、全社においても有効な情報交換が活発になされるようになってきたのである。
この二人の営業所長の動きが、その後の営業所長会議でも“全社活性化の核”として大きな役割を担うようになったのは、言うまでもない。そして、地方の二つの営業所を起点に、お客様に対する考え方・動きが、会社全体で大きなうねりを上げて変わろうとしていた。この企業が、2年後にはV字回復を遂げ、業界で一目おかれる存在にまで成長するとは、この時点で誰も予想していなかった。
今日は月末の営業所長会議。海野は地方都市の営業所長としてそれなりの実績を残してきたが、ここ3年ほどは海野の営業所のみならず会社全体の業績も思わしくない。社長は今年からソリューション戦略を打ち出し、起死回生の一打を講じようとしているところである。
《社長だけじゃない、俺だって必死だ!社長の戦略を受けて、商談の進捗管理を週単位に強化したし、メンバーごとにランクアップ率を明確にしてレベルに応じた指導をしている。メンバーも必死に応えてくれようと頑張っている。自社商品を売るための販促ツールだっていくつも作ったし、夜は遅くまでメンバーと商談のロールプレイングだ。一体これ以上何ができる?》
そんなことを考え、会議中に一人悶々としていた矢先、最近所長に抜擢された浅沼が手を挙げた。
「社長!ソリューション戦略を掲げたからには、私たちのマネジメントの内容も変える必要があるのではないでしょうか。もちろんこれまでのように行動量をベースにした管理は大切だと思います。でもそれ以上に、今は需要を創り出す知恵がないことには戦えませんから、その知恵をいかに生み出すかをマネジメントに組み込むことこそ、今の私たちに必要だと思うんです」
《は?・・・知恵を生み出すマネジメント?》海野は首をひねった。
「例えば、今アプローチしている企業が、市場から選ばれ続けるためにはどうしたら良いと思うかとメンバーに問うと、それまで自社商品というフィルターを通してお客様を見ていたのが、市場環境におけるお客様の立場を見るように変わります。すると提案の発想が自社商品の売り込みではなく、自社商品以外にも必要な様々なものを視野に入れたソリューションになり、何とか良い知恵を生み出そうとするんです。そうやってターゲット選定やアプローチの仕方、提案内容、アフターフォローといったすべての顧客接点でメンバーの知恵を引き出していくことが、私たちの役割だと考えます」
「よし、次回はもっとポイントをまとめて具体的に提案してくれ。これを重要テーマとして当面進めていこう。」社長の満足げなその一言で会議は終了した。
海野は次の会議まで待ちきれず、席を立つなり浅沼に駆け寄り、教えを乞うた。「あれは、浅沼さんの営業所でどういう風に進めているんですか?!」
浅沼の答えは意外なものだった。
「いやぁ、実はあんな偉そうなことを言いましたが、毎日メンバーと試行錯誤ですよ。ソリューションって言いながら結局売り方の指導になっているって、実は部下に指摘されて気づいたんです。・・・重要なのは、どうすればお客様の成果につながるかを考え続けることですよね」
海野には正直なところまだピンとくるものはなかった。しかし、《何か、新しいヒントが得られるかもしれない》と、とにかく浅沼を真似て動いてみることにしたのだ。販促ツール作りやロールプレイングよりも、まずは一社一社について《どうすればそのお客様が市場から選ばれるか》を考えて解決策を作るソリューションミーティングを優先して行なうことにした。
実際、やり始めてみると、全く意見が出てこないなど、ミーティングをスムーズに進めることは容易ではなかった。しかし、毎日、毎日、習慣化させることで、少しずつではあるが、今までは出てこなかったような意見やアイデアが、メンバーから出てくるようになってきた。《これは大きな進歩だ!》と海野は感じ始めていた。また、全部、というわけにはいかないが、お客様の成果につながらないと感じる提案内容に対しては、メンバー皆でさらなるアイデアを出し合い、もみこんで再度作り直すなど、妥協せずにやり直しをサポートし続けたのである。
さらに、海野自身も、今までは月末の営業所長会議でしか会わなかった浅沼に、意識的に週1回は電話で連絡を入れ、報告方々、アドバイスをもらうようにした。すると、浅沼からの全く違う視点からのアイデアをもらえたり、また、海野自身が浅沼に「それは気づかなかった!うちでも早速やってみるよ」と言わせるようなノウハウを提供できるようになるなど、全社においても有効な情報交換が活発になされるようになってきたのである。
この二人の営業所長の動きが、その後の営業所長会議でも“全社活性化の核”として大きな役割を担うようになったのは、言うまでもない。そして、地方の二つの営業所を起点に、お客様に対する考え方・動きが、会社全体で大きなうねりを上げて変わろうとしていた。この企業が、2年後にはV字回復を遂げ、業界で一目おかれる存在にまで成長するとは、この時点で誰も予想していなかった。



その企業が提供している商品やサービス内容と、その企業のお客様が期待している内容とに大きなギャップがあり、変革の必然があるか。

ターゲット企業の意思決定ルートと、面談者の人物タイプとを見極めた「成功確率の高いアプローチ方法」になっているか。

「お客様が気づいていないニーズを充足」し、「お客様の成果に結びつく解決策(=ソリューション)」になっているか。

「ソリューションの実践によって生み出されたお客様の成果」の進捗はどうなっているか。


「知恵を生み出すマネジメント」。それは、お客様の成果向上にこだわること、そのために何ができるかを徹底的にチーム全員で考えていくことが原点です。提案前から、そして導入していただいた後もなお、お客様成果向上に寄り添おうとするスタンス。まずそれをリーダー自身が実践することこそが、「知恵を生み出すマネジメント」定着の第一歩になります。




























